2005/08/20
第5回
イタリアン・スポーツセダンの傑作アルファ156は今もアツイ!
Alfa 156 2.5 V6 24V Q-SYSTEM(LHD) (1999)
Alfa 156 2.5 V6 24V Q-SYSTEM(LHD) とは?
起死回生のヒット作
155の後継である156は、1997年に欧州でデビュー。エッジーな155から一転、丸みを帯びたスタイリング、往年のアルファ名車のモチーフを受け継いだディテール、いかにもアルファらしい味のある走りでヒットし、1998年のカー・オブ・ザ・イヤーも獲得。欧州はもちろん、日本でも大成功し、販売面で苦しんでいたアルファを甦らせた。デザインは当時アルファに在籍していたワルター・デ・シルバ(Walter De'Silva)が担当した。
主力は2.0ツインスパークと2.5・V6
日本上陸は1998年5月。当初のエンジンは2リッター「ツインスパーク」(155ps、19.1kg-m)と2.5リッターV6(190ps、22.6kg-m)でスタート。変速機は前者が5MT、後者が6MT。翌1999年3月からツインスパークに「セレスピード」(5速セミAT)が、V6には「Qシステム」(アルファ独自のH型マニュアルモード付き4AT)が追加された。また、それぞれに2ペダルの左ハンドル仕様も追加された。2000年3月(日本発売は9月)に「アルファ・スポーツワゴン」が登場。スポーツワゴンには2リッター・ツインスパーク(セレスピード)と2.5リッターV6(Qシステム)を用意した。
2002年7月には、3.2リッターV6(250ps、30.6kg-m)を積む高性能モデル「156GTA」(6MT)が登場。GTAとは60年代の市販レースマシンの名に由来する。2003年11月には、スポーツワゴンのGTA(6速セレスピード)を発売。一方、2002年9月には、156の2リッター車がツインスパークから新開発の直噴ガソリンエンジン「JTS」に変更された。
2003年9月にはジウジアーロによってフェイスリフトが行われ、ヘッドライトがシャープな釣り目になり、フロントの盾も147風に大きくなった。翌2004年1月には外観や足回りをスポーティ仕様にした156TIが加わった。
ボディサイズ&デザイン
ジュリアスプリントの再来
今回のテストカーは99年モデルの156セダン。ボディサイズは全長4430mm x 全幅1755mm x 全高1415mm。欧州車らしく短くてワイド。ハンドル切れ角が原因で小回りは効かないが、日本でもまずまず使いやすい。車台はフィアットのブラーボ/ブラーバ派生版だが、ほとんどがアルファ独自の設計で、これが「シャシーもアルファオリジナル」と言われる所以だ。
インテリア&ユーティリティ
赤いキーヘッドがアクセント
156の日本仕様は右ハンドルでスタートしたが、今回テストしたクルマは翌年追加された左ハンドル車で、インポーターが「イタリア本国仕様」であることをカタログで謳っていたモデルだ。通常のV6日本仕様はレザーシートだが、これはイタリア人好みのグリーンベルベット素材が使われている。メーターはホワイトの文字盤とクロームリング付き。左ハンドルだとキーをステアリング右側に差すので、キーヘッドのアルファレッドが助手席側から見える。
着座位置が低い後席は特に広くないが、大人4人が十分寛げる。ベルベットは手触りが良くて体も滑らず、居心地は良い。中央にヘッドレストはあるが、シートベルトは2点式。2.5 V6のサスペンションはソフトで、乗り心地は良い。
試乗インプレッション
Qシステムは普通のAT
試乗車はアルファ伝統のオールアルミ製2.5リッターV6搭載車(190ps、22.6kg-m)。クロームメッキされたエグゾーストパイプが輝き、ヘッドカバーに赤く「Alfa Romeo」と刻まれる。基本設計は古いが、156では電子制御スロットルなど最新技術が与えられている。
6速マニュアル車もあるが、今回の試乗車はトルコン4ATのQシステム。メカ自体は日本のアイシンAW製で、その名称はSPORT、CITY、ICE、そしてマニュアルの4つのモードを備えることから「Quartet(四重奏)」を語源としたもの。マニュアルモードが通常のシーケンシャル式(前後もしくは左右に動かしてシフトする)ではなくH型パターンなのがユニークだ。
Dに入れて走り出すと、アルファらしいV6サウンドが「ロロロン」(「ブロロロン」ではなく)と響き渡る。中・高回転域の「トルク感」とテノールサウンドが気持ちいい。力感はないが、ヴィンテージスポーツカーのような味がある。ピックアップはやはりトルコン的にルースで、逆に言えば普通のAT車のように乗りやすい。H型マニュアルモードは、Dからシフトレバーを左にガシッと動かしてから、左上(1速)、左下(2速)、右上(3速)、右下(4速)とシフトする。特に操作したくなるものではないが、自動シフトアップしないので山道では使いやすい。
ロールさせて曲がるタイプ
前ダブルウイッシュボーン、後ストラットの足回りはソフトで、フロントを軸に深くロールする。156の日本仕様はスポーツサスペンションが一般的だが、今回試乗したような2ペダル(セレスピード含む)の左ハンドル車は本国仕様で、かなり柔らかい。凹凸を飲み込むように乗り心地は良いが、ロールは大きく、ロールスピードも速い。クイックと言われたロック・to・ロック:約2回転のステアリングも、レスポンスはゆったり(ダンパーのヤレを勘案しても)。スポーティなイメージのアルファだが、最新の147でもこの156でも足を固めて姿勢変化を抑えて‥‥という方向ではない。これがアルファ本来の味付けのようだ。
試乗車スペック
年式・車名 | Alfa 156 2.5 V6 24V Q-SYSTEM(LHD) |
---|---|
形式 | GF-932A1 |
寸法 | 全長4430mm x 全幅1755mm x 全高1415mm |
ホイールベース | 2595mm |
車重 | 1390kg |
駆動方式 | FF |
エンジン | 2.5リッターV型6気筒DOHC |
最高出力 | 190ps/6300rpm |
最大トルク | 22.6kg-m/5000rpm |
トランスミッション | 4AT |
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使用燃料/容量 | プレミアムガソリン/63L |
10・15モード燃費 | -km/L (未発表) |
JC08モード燃費 | -km/L |
タイヤ | 205/55R16(オプション) |
最小回転半径 | - |
販売時期 | 1999年3月(2.5 V6 Q-SYSTEM) |
当時の新車価格 | 429万5000円(消費税抜き) |
購入ガイド
意外にトラブルが少ないV6
初期セレスピードのトラブルはよく知られる。症状としては(バック)ギアに入らなくなる、変速できなくなるなど。リコール対象車であれば、対策済みかどうかをチェック。対策済みや年式の新しいモデルは強化品に換わっている。気になるタイミングベルトは、年に1回のテンショナー点検・調整が必須、5万km毎の交換が目安と言われる。一方、V6モデルは重大なトラブルが少なく、タイミングベルトも長く持つようだが、そうは言っても6~7万kmで交換したい。また、マニュアル車は7万kmくらいでクラッチのレリーズシリンダーのOHが必要。ラジエイターの腐食を防ぐため冷却水の交換も年に1回は行いたい。
情報を集めておくことが重要
全モデルに共通するのは、警告灯の誤作動(配線チェックしてリセット)、助手席フロアへの浸水(エアコンのドレン修理。新車時)、パワステオイルのリーク(たまに)、水温高め安定の場合はファンレジスターの交換。ほかにスイッチ不良、内装はがれなど。ただし対策前のセレスピード以外、走行不能になるトラブルは少ない。すでにインターネットでも多くの情報が得られるので、購入前から目を通しておくのが大事だ。そうすれば購入後も冷静に対処できる。
100万円から156が買える!?
巷の相場は極端に安い/高いを除いて、だいたい以下のようだ。
- ・1998年モデル:100万~150万円
- ・1999年モデル:100万~200万円
- ・2000年モデル:100万円~230万円
- ・2001年モデル:130万~230万円
- ・2002年モデル:150万~250万円(GTA除く)
100万円辺りが最低ラインだが、アルファは買ったあとのメンテナンスに手間も費用も技術(知識)も必要なので、購入時の金額で選ぶべきではない。保証付きで150万円が2005年現在のボーダーラインだ。ここで見込みが甘いとかえって高い買い物になってしまう。
お勧めはツインスパーク5MTかV6のQ
おすすめは手堅くツインスパークの5MT。使い勝手に支障がなければ左ハンドルも面白い。今や左ハンドル・マニュアルはアルファやポルシェなど、かなり限られた車種になる。男女を問わず、お稽古事の感覚で乗りこなしたい。2ペダルが必須条件なら今回試乗したQシステムは運転する限りまったく普通のAT車であり、トラブルも少ない。2ペダルになるが、機能性とスタイルでスポーツワゴンを選ぶのもいい。
いろいろとドラマがありそうなアルファだが、それだけに人との出会い(ロマンチックなものとは限りませんが)も学ぶこと(クルマ、文化、生き方など)もたくさんある。個体数も多く、情報や純正・社外パーツも手に入れやすい。クルマを実用だけでなく趣味として楽しみたい人には大いにお勧めしたい。