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FIAT コンパクトカーオープン
2022.06.20

Vol.9 【フィアット 500e(チンクエチェント・イー)】

Vol.9 【フィアット 500e(チンクエチェント・イー)】

15年ものロングセラーで、大人気を博している「フィアット 500」。新型モデルはパワーユニットを電気とし、「500e」として生まれ変わった。新しいのに、しっかりチンクエチェントらしいデザインも特徴である。今回は電動オープンが装備されたグレードを短時間ながら試乗することができた。

これぞ新時代のシティトランスポーター!

2007年に久々に復活した「500(チンクエチェント)」は、実に15年という長いロングライフで、イタリアはもちろん、この日本でも根強い人気を博している。途中で何度か多少のマイナーチェンジはあったものの、デザインは大きく変わっていない。15年経過しても、決して古さを感じさせない、このデザインは本当に秀逸なものであると実感させられる。

今回は500eの中でも、電動開閉ルーフが装備された「Open」に試乗する。

シートサイズも結構ゆったりしている。シートには「FIAT」という文字が並べられて、文字がデザインになっているというユニークさ。

当初は直列4気筒の1.4Lと1.2Lからスタートし、途中で1.4Lエンジンの代わりに、世界的にも珍しい直列2気筒の“ツインエア”と呼ばれる875ccのエンジンを搭載したモデルが登場した。特に個性的なツインエアエンジンはファンも多く、独特のビート音は多くのユーザーを笑顔にさせたに違いない。一方で、1.2Lエンジンはツインエアエンジンの陰に隠れがちになってしまうが、実際に走ってみるとこれはこれでイタリア車らしい小気味よさが気持ちいい。

しかし、15年もの間に、自動車の電動化もずいぶん進み、今回の新型「500e」のパワートレインはその「e」というネーミングが入っている通り「電気」である。近頃の車としては珍しく、あえての「振動」を楽しさとして演出していた500が、音も静か、振動もないといっていい電気に代わるのである。これは、どんなクルマになっているかとても気になるし、先代500のような楽しさが残っているのかどうかも気になる。

では早速試乗してみよう。

インパネにあるスイッチを押すことで「起動」するわけだが軽くスタートミュージックが流れるあたり、オシャレなイタリア車らしいところだ(どんな音かは動画をご参照いただきたい)。

エンジンはないが、スイッチには「ENGINE」と表記がある。

シフトはスイッチ方式、パーキングブレーキも電気式である。オートホールド機能付きブレーキも装着されている。あれほどアナログだった500。この進化自体に驚かされる。

シフトはスイッチ方式。

まずはクローズドの状態で走行してみよう。全高は先代に引き続き高めで、1530mmある。おかげで、前席に座った印象は決して狭い印象はない。また、アップライト気味に座れるのもよく、乗り降りがしやすいのも嬉しいところだ。

インテリアにはユニークなデザインも多く、全体的な質感の向上にも驚かされた。また、シートには“FIAT”の文字が並べられて、ひとつのデザインになっているのも面白い。とにかく、いつの時代もイタリアのクルマは個性的でほかのメーカーがやらないようなデザインをやってのける。

先代モデルより、かなり質感が上がったインテリア。先進性と懐かしさをうまく両立させている。

走行モードは3つあり、「ノーマル」「レンジ」「シェルパ」から選ぶことができるが、まずは「ノーマル」モードで走ることにする。このモードではごく普通に、走ることができる。「ごく普通に」というのは従来のガソリン車のように、アクセルオフの状態でも軽くエンジンブレーキ(電気自動車だからこの車の場合は「回生ブレーキ」だが)がかかるようになる程度。電気は0回転から最大トルクを発生するので、発進は非常に気持ちいい。ブレーキを踏んだ際のフィーリングも不自然感はなく、通常のガソリン車と同じフィーリングだ。

モード切替スイッチはセンターコンソールに用意されている。

また、今回の「500e」では先進運転支援システムの充実度も素晴らしい。先行車に追従するACCに加えて、車線の中央を走るようにステアリングをアシストする「トラフィックジャムアシスト」や「ブラインドスポットアシスト」など一気に現代の高いレベルの先進運転支援を装備してきた。

先進運転システムの操作スイッチはステアリングスポークに装備され、わかりやすい。

続いて「レンジ」モードにしてみる。これはいわゆる「ワンペダル」ドライブが可能なモードで、アクセルを放せば強い回生ブレーキがかかり、ブレーキペダルを踏まなくとも停車することができる。乗り慣れないと最初はうまく操作できないかもしれないが、慣れてしまえば、非常に扱いやすくいい。作動にも不自然感がなく、私はこのワンペダルでの走行がいいように感じた。

ルーフをクローズド状態にした場合。

ステアリングは先代ではチルト機構(上下)しかなかったが、テレスコピック機能(前後)もあるのは嬉しいところだ。

乗り味はやはりショートホイールベースであるということ、また上級グレードで205/45R17というタイヤを履いていることもあり、少し足回りで道路の凹凸を吸収し切れていない印象がある。どうしてもピッチング方向での揺れが多少気になる。

205/45R17のタイヤ&ホイールを装着している。個性的なデザインだ。

先進的なインテリアではあるが、エアコンは物理スイッチが用意され、操作しやすい印象は好感が持てる。

エアコンは物理スイッチが用意されていて、実に扱いやすい。

では、続いて屋根を開けてみよう。走行中でも屋根が開閉できるのは嬉しいところである。特に、静かな電気自動車でオープンのモデルというのは極めて珍しい。また、開放感があり少し見上げれば青空が見えるというのも嬉しいところである。上の部分だけ開ける(キャンバストップ風)、さらにリヤウインドウを畳んで全開と選べるが、やはり全開モードだとルーフが折りたたまれた部分が後ろに残るため、後方視界が悪くなってしまう。

「シェルパ」モードで今度は走ってみよう。これも「レンジ」モードと同じく、ワンペダル走法可能である。このモードでは航続距離を延ばすためのモードで、いわゆる「ECOモード」に近いものと思っていただければいいだろう。しかし、パワー不足を感じることはない。

アクセルを床まで踏めば、やはり電気自動車らしく大きなトルクでしっかりとグイグイと加速する。当たり前であるが、この印象は先代の500とは全く違うクルマだ。

ボンネットはダンパー支持!もちろん、こちらに電気モーターやインバーターが備わる。

しかし、乗っていると間違いなく筆者は「楽しいクルマ」という印象を強く受けた。先代モデルとパワーユニットは違うのに、ドライバーとして走らせてみると、先代のような「500」の楽しさが残されている。これはこの車が醸し出す雰囲気、ステアリングのフィーリング、アクセルを踏んだ時の加速感などなど、いろんなものが「500」らしいフィーリングになっているのだろう。さらに、今回試乗した「Open」だとオープンエアの楽しさが加わるわけだ。

オープンエアを電気で楽しむというこれまでになかった提案。とっても毎日が楽しくなりそう!!

前席も非常に開放感があり、オープンエアを楽しめる。

特に500はボディサイズもコンパクトで、街乗り用の車として活躍する場面が多いと思うが、まさにこう言った性格には「電気」というパワーユニットは理にかなっているだろう。そして、今時としてはもう珍しくなった「5ナンバーサイズ=小型車枠」ということで、狭い道路でも極めて運転しやすいのは日本で運転していると改めて痛感するところである。

やはり5ナンバーサイズは実に扱いやすい。毎日のトランスポーターとして、電気というパワーユニットは実に相性がいい。

電気になってもしっかり「チンクエチェント」。これは欲しい!と思えるような電気自動車に仕上がっていた。

細かく見れば、先代モデルとは明らかに違い新しくなっているが、どう見ても「チンクエチェント」。しっかり、それらしいスタイリングを演出している。

FIATのエンブレムも刷新された。

さすが細かなディテールが凝っている。これはターンシグナルだ。

さりげないアクセントがオシャレ。

ドアハンドルは電気式。スイッチを押して開けるタイプだ。

内側からドアを開ける際もスイッチ方式。

バッテリーが上がってしまった時など、ドアハンドルが電気式で開けられない場合はこちらのエマージェンシードアハンドルも用意されている。

後席は全長が短いため、正直ミニマムなもの。エマージェンシー用、もしくは荷物置き場と考えたほうがいいだろう。

インフォテイメントシステム系の充実度合いにも驚かされた。

ルーフの開閉は、スイッチで簡単に操作できる。

シートの模様は「FIAT」である。

ブラインドスポットモニターも用意されている。

リヤのエンブレムはデザインが異なっている。

トランクルーム。入り口はやや狭いが、後席を倒すこともできる。

日常のお買い物程度なら十分な空間だろう。

フロントに堂々と「500」のエンブレムが装着される。

ショールーム一覧はこちら

FIAT 500e OPEN主要スペック

<寸法・重量>
全長…3,630mm
全幅…1,685mm
全高…1,530mm
ホイールベース…2,320mm
車両重量…1,360kg

<原動機>
種類…交流同期電動機
定格出力…43.0kW
最高出力…87kW(118PS)/4,000rpm
最大トルク…220Nm/2,000rpm

<駆動用バッテリー>
種類…リチウムイオン電池
総電圧…3.65V
総電力量…42kWh
交流電力消費率(WLTCモード)…128Wh/km

<駆動方式・一充電走行距離>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
一充電走行距離(WLTCモード)…335km


<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット
リヤ…トーションビーム

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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