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BMW クーペオープン
2022.05.13

Vol.7 【BMW 4シリーズカブリオレ(420iカブリオレ)】

Vol.7 【BMW 4シリーズカブリオレ(420iカブリオレ)】

2000年代には各ブランドから販売されていた「4シーターオープン」も2020年代となる今、激減してしまった。そんな中、BMWは快適性も極めて高い4シーターオープンモデルを販売し続けている。

オープンエアの楽しさと実用性を高い次元で兼ね備えた4シーターカブリオレ

「4シーターオープン」。一般的にはなかなか馴染みのないカテゴリーかもしれない。しかし、1990年代から2000年代にかけては、ヨーロッパの自動車メーカーを中心に、BセグメントからDセグメントまで数多くの「4シーターオープン」が用意されていた。しかし、2010年代になり、ベースモデルがモデルチェンジをしても、オープンモデルが用意されなくなり、今となってはドイツのプレミアムブランドに少数用意される程度になってしまった。そのひとつが今回取り上げる「BMW 4シリーズカブリオレ」である。

迫力あるフロントフェイスが特徴ある「BMW 4シリーズ」。

もともとはBMWはDセグメントの中心「3シリーズ」にカブリオレが派生車として用意されていたが、先代モデルからクーペモデルが4シリーズになったことにより、カブリオレも4シリーズ派生となったわけだが、中身は4シリーズのクーペ同様3シリーズと共通している部分が多い。
今回はこの貴重な存在の4シーターオープンを4日間お借りして、ロングツーリング試乗を行った。日常生活に使う実用車として使うことができるのか、またクローズドとオープンの状態でのロングツーリング性能はどうなのかをじっくり検証していく。

初お披露目の際は賛否両論だったフロントフェイスも、近頃は好意的なコメントを聞くことが増えたような気がする。

今回、4日間のテストに使用する試乗車は「420iカブリオレ Mスポーツ」という直列4気筒の2.0Lターボエンジンを搭載したモデルである。先代モデルには直6モデルしか用意されず、価格もかなり高い印象が強かったが、今回は十分なパワーとトルクを発揮し、直6モデルよりはうんとお求めやすい価格になった420iが用意されたことはとても喜ばしいことである。なお、上位機種には直6ターボを搭載した440iも用意されるので、選択の幅が広がったというのが嬉しい。

エンジンは直列4気筒 2.0Lターボエンジンで、最高出力は184馬力、最大トルク300Nmを発揮する。結論から言えば、さすがBMWで、気持ちのいいフィーリングを味わうことができ、とてもマッチングのいいエンジンである。車両重量が1.7tを超えるクルマであるが、不満点は感じることがなかった。低回転から大きなトルクを発生するので、急坂などもアクセルをわずかに踏み足すだけで、グイグイ加速していってくれる。

エンジンは直列4気筒 2.0Lターボエンジンで、最高出力は184馬力、最大トルク300Nmを発揮する。

まずはクローズドの状態でのレポートから。屋根が開けられる魅力はあるものの、やはり日本の気候からすれば、クローズドの状態で走ることが多いであろう。だからこそ、クローズド状態での快適性が重要になってくるわけだが、まずはその静かさに驚かされた。先代の4シリーズはハードトップだったものが、今回はソフトトップに変わり、さらに4シーターオープンは幌と窓が当たる部分も広いため、凹凸を超えたりした場合にそこからミシミシといった音が発生してしまうものだが、今回の4シリーズはかなり抑えられており、このあたりはさすが長年4シーターオープンを作っているメーカーであると驚かされた部分である。実際に走っていても、オープンモデルとは思えない剛性感の高さにも感心した。

先代モデルではメタルトップを採用していた4シリーズであるが、今回はソフトトップを採用し、原点回帰。時速50km/h以下ならば走行中でもルーフの開閉ができるのは嬉しい。

一般道で屋根をオープンにしてみる。50km/h以下ならば走行中でもルーフ開閉ができるため、非常に使い勝手がいいのも魅力的なところである。一言で言って気持ちいい。それも風の巻き込みも抑えられているのが嬉しいところである。今回は後席のところに装着できる「ウィンドディフレクター」を装着したため、より快適なオープンドライブを楽しめた。ただ、サイドウィンドウは上げておく必要はある。屋根を開けても閉めても極めて高い快適性が保たれているといえるだろう。テスト日は外気温9℃でやや寒かったが、ヒーターとシートヒーター、エアカラーと呼ばれる首元から温風を出す機構を付ければ、極めて気持ちよく冬のオープンも楽しめる。

ウィンドディフレクターを装着した場合は2人乗りになるが、前席での快適性は向上する。

開放感あるオープンドライブは極めて気持ちがいい。

先進運転支援は3シリーズでも非常に感心した三眼カメラを用いた、高性能な運転支援システムが装備されている。近頃ではかなり一般化してきているともいえる、車線の中央を維持するようにクルマの方からステアリングをアシストする機構であるが、この車の場合は車線が薄くて消えていたとしても、先行車をターゲットにしてついていくような動作をする。
また、先行車に追従するACCであるが、先行車が停止して、自車も停止している場合はアイドリングストップに入るが、その後先行車が再発進する際にエンジンが自動的にかかるわけだが、数日乗っていた感覚からすると2台前の車が走り始めるとエンジンがかかるような印象を受けた。よりスムーズに発進できるような配慮かもしれない。また、再発進にしても日常の信号待ちぐらいの停止時間ならば、ドライバーは再追従ボタンを押さなくても自動的に再追従が始まる点も、極めてスムーズでいいと思える点だった。なお、車間距離の調整幅は4段階である。

先進運転支援で重要な役割をする三眼カメラ。

先進運転支援の表示も非常にわかりやすく、レーンチェンジのアシスト、周囲の状況などリアルに表示してくれる。

アイドリングストップも装備されているが再始動もなめらかである。
今回の試乗車には「ファストトラックパッケージ」というオプションが装着されており、ホイールが19インチの低偏平率タイヤを履いていた。前輪は40%、後輪は35%の低偏平だ。これだけを見ると、乗り味が悪くなっているのでは…という不安を持っていた。一方でファストトラックパッケージには「アダプティブサスペンション」も装着される。これがきっといい仕事をしているのだろう。「Mスポーツ」と聞いてイメージするような硬さは影をひそめ、しなやかでありながら、ドイツ車らしいしっかり感を感じさせる乗り味は魅力だった。これはモード切替で、乗り味を変えることができ、よりスポーティに硬めの乗り味が良ければ「スポーツ」モードをチョイスすればいいが、これも決して快適性をスポイルしたようなゴツゴツ感にならないあたりが、いいところである。また、オープンモデルはどうしても、ボディ剛性が落ちてしまい、フロアからのブルつきなんかを感じることが多いが、そのあたりも全然感じられないところが素晴らしかった。

ファストトラックパッケージが装着されており、19インチのアルミホイールが装着されていた。前輪は偏平率40%、後輪は偏平率35%。そんな低偏平なタイヤでも、乗り味はドイツ的な味でありながら、快適性をスポイルするような乗り味でないのが魅力的である。

それでは、まずクローズドの状態で高速道路を走行することにしよう。
高速道路ではACCを使い、ドライバーの疲労負担を軽減するアシストシステムをしっかり使いながら走ることにする。液晶メーター部には周囲の交通状況を表示することができ、車線や、周囲のクルマがトラックと認識すればトラックのイラストに、バイクと認識すればバイクのイラストに変わる。

先進運転支援システムの操作スイッチ。

前方のクルマはトラックと認識したら、トラックのイラストが表示される。バイクがいれば、バイクのイラストが表示される。

また、車線変更をしたい場合、普通の車線変更通りターニングシグナルを軽く操作すれば、周囲のクルマを4シリーズが確認して、車線変更に問題がないと認識すれば、自動的にステアリングをきり(手放しはNG、アシストするという考え方)、車線変更をアシストしてくれる。滑らかな作動にも感心させられた。また、従来の車だと軽くターニングシグナルを操作する(コンフォートフラッシャー)際に方向指示灯が光る回数は3回が多いが、4シリーズは車線変更が完了するまで光っているのもいいところだ。

なお、時速80km/hで流れているときのエンジン回転は7速ギアで、1,500回転をやや下回る程度である。100km/hへの加速は滑らかで雑味のない、気持ちのいい加速感を味わわせてくれる。ゆったりと走っても気持ちいい、BMWらしくスポーティに走ってももちろん気持ちいい、贅沢なクルマである。
時速100km/hでのエンジン回転は8速ギアで、1,400回転である。7速で1,800回転、6速2,200回転、5速2,900回転、4速3,800回転、3速4,800回転、2速には時速100km/hでは入らない。時速100km/hでクローズドで走っている際に一番気になる音はロードノイズだ。太いタイヤを履いているということも影響しているだろう。しかし、オープンカーで気になる風切り音は気にならない。

青空×オープンカー。最高の組み合わせである。

続いて、高速道路をオープン状態で走行してみる。ウィンドディフレクターは装着して、サイドスクリーンを上げた状態で走ることにする。外気温は11℃なので、ヒーターと、シートヒーター、エアカラーを作動させてスタートさせる。
時速100km/hでのオープン走行はやや高めにシートポジションをしている私はやや頭上のてっぺんを風が流れていくが、髪が乱れるようなことはないし、ウィンドディフレクターのおかげで後ろからの風の巻き込みは相当抑えられている印象がある。エアカラーは蒸しタオルを首においてもらったような気持ちよさがある。

コニャックカラーのインテリアがオシャレな4シリーズ。ヘッドレスト下方から出てくる温風、エアカラーは蒸しタオルを首においてもらったような気持ちよさがある。

今回の試乗でひとつ欲しいと思ったのはステアリングヒーターだ。
昔はMスポーツモデルといえば、全体的にスポーティ=ブラックというイメージが強くて、優雅な雰囲気が少ないと感じていたが、今回の試乗車は「コニャック」と呼ばれるカラーのレザーシートが装備されていて、とてもラグジュアリーで、いい雰囲気を醸し出していた。

今回の試乗で585.6km走行した。トータルの燃費は13.7km/L(車載燃費計)だった。平均車速37km/h。高速道路と一般道の割合は50%ずつくらいで、それなりの渋滞にも入ったことを考えれば、悪くない燃費だったように感じる。

今回筆者が注目していた3つのポイントをまとめとして、以下に列挙する。

① 希少な4シーターオープンの魅力を再確認

やや後席の背もたれは直角感があるが、広さは十分な空間。

セダン・クーペと比較して、前席に関してはほぼ変わらない印象で乗ることができる。後席の背もたれはやや直立気味で膝回り空間はやや狭い。しかし、4人乗れるということ、荷物が載せられる点は大きなアドバンテージがある。また、2シーターオープンの多くは前席をリクライニングできないケースが多いが、4シーターならリクライニングできるところもいい。

② オープン時・クローズ時それぞれロングドライブでの快適性は?

エレガントさとダイナミックさが共存しているデザイン。

風の巻き込みは極めて少ない。シートに関してはMスポーツとはいえ、革シートの印象は、ランバーサポート含め、こまめに調整できる点もよかった。今回のテストで筆者がこのシートで疲れたという印象を受けることはなかった。また、先進運転支援システムの充実にも驚かされた部分である。

③ 4シーターオープンを4人家族のファミリーカーとして使えるのか?

使える。後席にはチャイルドシートも装着することができる。ISOFIXでも、シートベルトでの装着も屋根を開けながらだったならば装着もしやすい。実際に子供を後席を乗せて、オープン状態でドライブをしてみたが、やはりやや後ろからの風の巻き込みで髪は乱れ気味だったが、背が低い分、影響は大人ほど大変ではなさそうに感じた。

ブルーのチャイルドシートがISOFIX固定、ブラウンのチャイルドシートがシートベルト固定である。屋根さえ開けていれば、シートの装着・脱着、子供の乗せおろしは苦痛ではない。

ミニバンでワイワイガヤガヤのドライブも悪くはないが、自然の空気を吸いながら、オープンドライブを楽しむというのはとても子供たちにとってもいい思い出になるだろう。後席でDVDを見せながら…というドライブよりは、家族みんなで景色を楽しみながらドライブを楽しむというのは子供の成長にとってもきっとプラスになるのではないだろうかと思う。

 

希少な存在となった4シーターオープン。ファミリーカーとして、使えば、クルマに夢をもつお子様に育ってくれるだろう。

 

やはり、エンジン屋さんとしてスタートしたBMW。その回転フィールは4気筒でも魅力だ。

 

リヤのスタイリングもシャープな印象。

 

オプションの360°カメラが装着されていた。

 

Mスポーツらしく、ステアリングのリムはかなり太かった。

 

ナビゲーションの表示も非常にわかりやすく、インフォテイメントシステム系の使いやすさには感激した。

 

Apple CarPlayはワイヤレスで接続可能でとても便利だった。

 

 

車両に搭載のナビも満足度が高かったが、使い慣れたスマホのナビも使えるのは嬉しい。

 

ワイヤレス充電+ワイヤレスApple CarPlayはとても便利である。

 

たった一つ気になったのは、パーキングブレーキとルーフ開閉スイッチが隣同士で同じ大きさと形状のため、間違えて操作してしまったことがあった。首に温風を受けるエアカラーはとても重宝した。

 

実用性の高さはトランクも。

 

後席を倒せば長尺物も積載できる。

 

オープンカー乗りにとってはぜひ欲しい、4枚同時に開閉可能な窓のスイッチ。

 

4シリーズと筆者。

ショールーム一覧はこちら

BMW 420i Cabriolet M Sport(BMW 420i カブリオレ Mスポーツ)主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,775mm
全幅…1,850mm
全高…1,395mm
ホイールベース…2,850mm
車両重量…1,730kg

<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,998cc
種類…直列4気筒DOHCガソリン
最高出力…135kW(184PS)/5,000rpm
最大トルク…300Nm(30.6kgm)/1,350~4,000rpm
使用燃料…無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション…電子油圧制御式8速AT

<駆動方式・燃費>
駆動方式…後輪駆動(RWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…13.3km/L
・市街地モード…9.8km/L
・郊外モード…13.3km/L
・高速道路モード…15.7km/L


<サスペンション>
フロント…ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式
リヤ…マルチリンク式

<メーカー希望小売価格(2022.4現在)>
654万円~(消費税込・420i カブリオレ Standard)

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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