New!Car試乗記
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ハイブリッドでも“爽快スポーツ”
2021年に発売された11代目のシビックは、まず1.5Lターボエンジンを搭載したモデルが投入され、このクルマのバランスの良さ、完成度の高さに驚かされた。ただ、やはり「電動化」モデルが主役になりつつある現代、「ハイブリッド」モデルの登場が初期段階で告知されていたことから、筆者自身もハイブリッドの登場をとても楽しみにしていた。今回はその「シビックe:HEV」を取り上げる。「e:HEV」とはもともと「スポーツハイブリッドi-MMD」という名前で登場したパワートレインであるが、今回エンジンも刷新し、大幅に改良が加わった。その点からしても、この「シビックe:HEV」に対する期待度は高まるものである。
Gocar注目3つのポイント
①「爽快スポーツ」どんなところが爽快なのか?
メーカーのプレスリリースによれば「爽快スポーツ」というキーワードが登場する。どんなところが、爽快なのか検証してみたい。
②従来のe:HEVとどんな点が違うのか?
エンジンは新開発のものが搭載されている。走った印象はどのように違うのだろうか。
③シビック本来のパッケージングの良さは残っているのか?
ハイブリッド化によって、バッテリーを配置したり、パッケージングにおいて不利な点も出てくるが、ベースモデルのようなパッケージングの魅力は変わらず存在しているかどうかを検証したい。
前回取り上げた「シビックタイプR」は2.0ターボエンジン(非電動化モデル)で、6速マニュアルトランスミッションが組み合わされていたが、今回はトレンドの電動化モデル。ホンダが搭載車種をどんどん広げているハイブリッドモデル「e:HEV」だ。
「e:HEV」は非常に電動感の強いモデルである。電気モーターだけで最高出力184馬力、最大トルク315Nmを発揮する。なお、新開発のエンジンは直列4気筒の2.0Lエンジンで、最高出力141馬力、最大トルク182Nmを発揮する。
電気モーターだけで走る「EVモード」、エンジンと電気モーター両方で走る「ハイブリッドモード」、高速クルージングはエンジンの方が効率がいいので、エンジンのみを作動させる「エンジンモード」と3つのモードを自動で効率がいいように切り替えていく。
早速、アクセルを強く踏んで加速を試みると、なかなかリニアでダイレクト感があって気持ちよく、また音の面においてもスポーティな走行フィールを感じることができる。これまでに様々なハイブリッドカーに乗ったが、一番スポーティで気持ちがいいと感じられるハイブリッドかもしれない。ノーマルモードでこんな印象なのであるが、モード切替スイッチで「スポーツ」モードを選べば、クルマ好きの人も従来のハイブリッドでは不満に感じていた部分が解消され、こんなハイブリッドならいい!と思う方が多いのではないだろうか。
乗り味に関しては、ベースの1.5Lガソリンターボエンジンはやや、タイヤがオーバースペックではないか(太すぎて、ホイールインチが大きい)という印象で、もう少しマイルドな乗り心地だといいなと感じていたが、ハイブリッド化により90kg重量が増している。そのおかげか、ベースのモデルよりはしなやかさを感じて、重厚感がある気持ちのいい乗り味である。ただ、タイヤは235/40ZR18という太いタイヤを履いているおかげで、少しロードノイズが気になる印象はあった。
モード切替には「ECON」モードもあり、これを選べばより電気モーターを積極的に使って走ろうとする印象が強かった。
嬉しいのは「減速セレクター」が装備されていることだ。最近登場している「e:HEV」モデルは「減速セレクター」が装備されているが、エンジン車のエンジンブレーキ同様に、回生ブレーキが段階的にかけられる。段階としては4段で減速度合いを選ぶことができる。
ステアリングの印象は「爽快スポーツ」の名の通り、クイックでドライバーの意思に応じた気持ちのいいコーナリングを提供する。
「スポーツ」モードにして加速をしてみると、その力強さにまず驚かされるが、その後の加速感、音がステップATのような味付けになっているところがユニークである。特に音に関しては、演出もあるようだ(アクティブサウンドコントロール)。
「e:HEV」は「スポーツハイブリッドi-MMD」と呼んでいた時代から、とても電動感が強く、大変力強い加速をするパワーユニットで筆者もお気に入りのパワーユニットである。いかに「電気モーター」だけで走ろうか…と考えながらアクセルワークなどを考えて走るのは、新しいクルマを運転する楽しさを提供してくれたが、一方で従来からある運転する楽しさ(=加速感が気持ちいい、ドライバーの意のままに…など)においては、音の面やリニアな印象に欠けるなど、不満に思っていた点がいくつかあった。しかし、今回の「シビックe:HEV」ではこれらのネガティブポイントが一掃されたといっても過言ではない。まさに、従来からある運転する楽しさも盛り込みながら、電動感を感じる運転の楽しさも味わえる。
また、先進運転支援システムの充実度合いも目を見張るものがあり、メーター部には周囲の道路状況がどうなっていて、自車がブレーキランプがついているかどうかのアニメーションも表示されている。
「シビック」とは「市民」という意味で、市民のためのクルマという意味を込めて初代が登場したのが1972年。それから50年が経過して、市民のクルマもとても贅沢で、ハイテクノロジーな素晴らしい製品が提供されるようになったのだと実感させられた。
前回取り上げた「タイプR」、今回ご紹介している「e:HEV」。ぱっと見、対極にあるようなクルマであるが、実際に乗ってみると「運転して楽しい」「痛快な走りが楽しめる」という点においては同じベクトルを向いていることがわかった。特にSUVが流行っている現代、どうしてもクルマの重心高は高めになって、素直に運転が気持ちよく、楽しいというクルマは少なくなってきている中で、このシビックに乗ると、クルマ本来の運転する楽しさというのを実感できると思う。
<まとめ>Gocar注目3つのポイント
①「爽快スポーツ」どんなところが爽快なのか?
アクセルを踏んだ時のダイレクト感、特に初期のe:HEVで不満点だった一定音の高鳴りなどもなくなって、大変気持ちのいい印象だった。特に「スポーツモード」を選べば、まさに「爽快スポーツ」であった。
②従来のe:HEVとどんな点が違うのか?
筆者は先代ステップワゴンe:HEVのオーナーでもあり、「e:HEV」の電気感にあふれた印象は面白く、いかに電気だけで走ろうかと考えながら走る楽しさはあったが、内燃機関モデルのような吹き上がりの気持ちよさなどには欠けていた。そのあたりが、今回の新型では大きく変わっていて、まさに走りの楽しさを味わえる1台であった。
③シビック本来のパッケージングの良さは残っているのか?
リチウムイオンバッテリーの搭載なども特に車内に大きな影響もなく、ベースのシビック同様に、広々とした、使い勝手のいい室内空間が提供されていた。
何よりも、ベースのシビックの完成度の高さから、非常に大きな期待を持って「タイプR」「e:HEV」ともに試乗に臨んだが、その大きな期待をさらに超えるようなフィーリングを得たというのは大きな収穫であった。価格を見れば、昔のシビックを知っていると驚くほど高くなっているが、ヨーロッパの同じセグメントのモデルとも全く引けを取らない、そして先進運転支援システムがしっかりと装備されていることから考えても、コストパフォーマンスはなかなかのものといえるクルマだろう。
ホンダ シビック e:HEV主要スペック
全長…4,550mm
全幅…1,800mm
全高…1,415mm
ホイールベース…2,735mm
車両重量…1,460kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,993cc
種類…水冷直列4気筒横置DOHC
最高出力…104kW(141PS)/6,000rpm
最大トルク…182Nm(18.6kgm)/4,500rpm
使用燃料…無鉛レギュラーガソリン
トランスミッション…電気式無段変速機
<電気モーター>
種類…交流同期電動機
最高出力…135kW(184PS)/5,000~6,000rpm
最大トルク…315Nm(32.1kgm)/0~2,000rpm
<動力用主電池>
種類…リチウムイオン電池
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…24.2km/L
・市街地モード…21.7km/L
・郊外モード…27.6km/L
・高速道路モード…23.4km/L
計測(Go!Carチャンネル計測値、おおよその値)
前席シート
シート高さ(地面から):42~47cm
座面幅:31.5cm
シート長:51cm
背面幅:29.5cm
後席シート
シート高さ(地面から):54cm
膝回り空間:14cm
ラゲッジルーム
地面から入口高さ:68cm
入口横幅(狭いところ):90cm
入口横幅(広いところ):116cm
横幅(広いところ):121cm(ボーズのサウンドシステムのため)
横幅(ホイールハウスで狭くなっているところ):102cm
トノカバー使用時の高さ:50cm
奥行:92cm
奥行(後席可倒時):175cm
バックドア取っ手までの高さ:176cm
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。