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HONDA ミニバン
2022.09.02

Vol.12【ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ】

Vol.12【ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ】

ホンダの大人気ミニバン「ステップワゴン」がフルモデルチェンジし、今回で6代目を数える。「エアー」と「スパーダ」の2タイプが用意されているが、今回は販売上位の「スパーダ」e:HEVを試乗する。また、筆者がプライベートで使用している先代モデルと比較をして、新型の魅力をお伝えする。

ひとまわり大きくなった大人気ミニバン

早いもので、6世代目を数える新型ステップワゴン。今回のモデルは全幅が1700mmを超え、一回り大きなボディサイズとなったが全幅1800mm前後のクルマが多い中ではまだ扱いやすい方だ。

1996年に初代が登場してから、早26年。当時はまだまだミニバンの人気が上昇中の時代で、特に「前輪駆動」+「フラットフロア」+「大空間」という組み合わせのミニバンが存在していなかった。初代ステップワゴンが登場する少し前までは、エンジンは前席下に配置され、後輪を駆動、もっとわかりやすく言えば商用車の「バン」を乗用車化したもので、あまり一般的なカテゴリーとはなりえていなかった6人以上が乗れる多人数乗用車。風向きが変わったのは、1990年に登場した初代の「トヨタ エスティマ」、そして1994年に登場した初代「ホンダ オデッセイ」である。このオデッセイの大ヒットを受け、ホンダは多人数乗れる乗用車を積極的に市場投入することになる。

初代のステップワゴンは、エンジンをフロントに置き、フロントを駆動。だから、床が低く、フラットフロアで前後左右のウォークスルーができた。もちろん、前席下にエンジンがないので、音も従来に比べれば静か。広い空間に家族みんなが楽しめるキャラクターも相まって、初代のステップワゴンは大ヒットとなった。それから、26年。オデッセイは生産が終了し、ステップワゴンがオデッセイの役割も担わなければならなくなるということもあり、5ナンバーを堅持していたステップワゴンが今回3ナンバーサイズに拡大された(一部グレードは全長の長さから先代モデルも3ナンバーだったが、基本的なベーシックモデルは5ナンバー枠)。

リアのスタイリングを見ると、初代モデルの面影を感じる。残念ながら、先代オーナーとしてとても重宝している「わくわくゲート」は引き継がれなかったが、パワーテールゲートが採用されていることで、楽に開け閉めすることができた。

先代オーナーとして非常に使い勝手の良かった「わくわくゲート」。

今回試乗したのは「e:HEV」と呼ばれるハイブリッド仕様である。なお、私も実際にプライベートで使用している先代モデルも同じ「e:HEV」である。基本的に先代モデルからのキャリーオーバーではあるが、エンジンに多少の改良が施されているとのこと。

今回試乗したのは販売の中心になるであろう「e:HEV」である。

走り始めて、最初に感じることは乗り味に重厚感を感じたこと、さらに音が静かになったこと、この2点がまず走り始めで強く感じられたところであった。全体的に上質感が向上したということがよくわかる。

メーターは先代モデルではデジタルメーターを高い位置に置いていたが、今回はオーソドックスなデザインになった。液晶が採用されている。

先代モデルのメーター。

前方視界でまず大きく変わったのがメーターの位置だ。先代モデルはデジタルメーターを高い位置に設置していたことで、視線移動を少なくするメリットがあったが、今回は従来通りのステアリングの上半分からメーターを覗くタイプ。しかし、液晶タイプになったことで様々な情報をいろいろと表示することができるようになった。また、視界もより広くなったようである。ただ、Aピラーがやや太く感じる部分もある。しかし、Aピラーが割と立っているので大きな問題にはならなさそうだ。

「e:HEV」は先代モデルも非常によくできていたが、加速の際にエンジン音が一定で高鳴るというネガティブなポイントがあったが、今回のモデルではエンジン車のステップATのように回転を制御して、人間の感性にマッチするようなチューニングがなされているのがいい。また、元来加速時も騒音は静かで、この辺りは先代モデルよりもかなり良くなっている。

もう一点、先代ユーザーから見て嬉しいところは「減速セレクター」が装備されたことだ。ガソリン車のようなエンジンブレーキをパドルシフトで操作することができるのがとてもいい。特に長い下り坂などの時には非常に重宝する。

近頃のクルマとしては珍しく、カクカクしたデザイン。

全幅が今回1695mmという5ナンバーサイズ枠から一回り大きくなり、1750mmとなったが、日常で扱う分にはそれほど大きな問題はなさそうだ。近頃は、1800mmを超えるクルマも多い中で、それを考えれば、まだ扱いやすいサイズである。

乗り味に関してもかなり上質な印象でいい。タイヤサイズも標準的な16インチで、乗り心地重視である点も嬉しいところだ。先代モデルも決して大きな不満のない乗り味ではあるが、より乗り味が良くなって、上質になっているようだ。オデッセイのユーザーも取り込むにはこういったことも重要だったということかもしれない。

いかにもホンダらしいなと思うのは、こんなミニバンでもやはり走りは楽しく感じられるところだ。運転の好きなパパも楽しめるミニバンといえるだろう。

運転を楽しんだ後、ゆったり家に帰りたいという場合には、ホンダセンシングの機能の一つである「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」や「トラフィックジャムアシスト」「車線維持支援システム」が非常に効果的だ。先代モデルにも採用されていたが、新たに渋滞時にもステアリングアシストをしてくれる「トラフィックジャムアシスト」の効果は大きそうだ。

また、メーターディスプレイの表示も非常に先進的であるし、わかりやすい。これはぜひ動画のPART2をご覧いただきたい。

先代モデルよりもさらに進化した「ホンダセンシング」が採用されている。

それでは、セカンドシートの乗り心地のフィーリングも体感してみることにしよう。さすがに、この手のミニバンではセカンドシートでの快適性が非常に高い。アームレストは左右についていて、ゆったり座れるのもいいし、ヘッドレストも大型化されたようだ。路面の凹凸をうまく吸収して、音も静かである。ただ、後輪に近いこともあり、後輪から発するロードノイズが一番大きな音のようだ。

シートを中央寄せにして、ロングスライドで後端まで下げると広々として気持ちいいが、実際に乗った印象はやや後輪に近くなることもあり、もっとも快適な印象は外側寄せの後端の位置のようだ。

セカンドシートはオプションでベンチシートも用意されているが、今回は7人乗りのキャプテンシート仕様である。

セカンドシートは大型のオットマンも採用され、横スライドで中央部、さらに後ろにロングスライドをすることで、膝回り空間は広大に。停止中には特にゆったりとくつろぐことができる。

今度はサードシートでの試乗インプレッションだ。特に今回のモデルは「全席で平等の快適性」というテーマがあるから、特にサードシートでの乗り心地は気になる。着座点は後ろになるにつれ、だんだん高くなっている。よって、見晴らしはなかなかいい。セカンドシートと比べれば、やはりサードシートの方が快適性には欠けるが、しかし先代モデルに比べればなかなか快適性は向上した印象である。

サードシートの出来は先代モデルよりは明らかに快適性が向上した印象である。

セカンドシートのサイドにはサンシェードが用意されている。できれば、サードシート部にも欲しいところだが…。

今回の筆者の注目していた3つのチェックポイントは

①先代モデルからの進化

こちらに関しては使い勝手においては「わくわくゲート」が廃止され、不満に思ってはいたが、電動テールゲートの採用などなんとかなるかなと思えたのが事実である。一方で走りに関してはなかなかの進化度合いで、先代モデルもマイナーチェンジでかなり良くなったと感じていたが、さらに快適性、上質感がアップしたように感じる。

②本当に全席平等の快適性になっているか

やはりミニバンでもっとも快適と感じさせられるのは「セカンドシート」。このクルマでも例にもれずという印象であったが、サードシートの乗り心地は先代モデルよりは明らかに良くなっていて、大きな不満のない印象だと感じた。

③サイズは大きくなったが運転のしやすさは健在か

特に全幅で55mm広がったがまだ何とか、日本の道路事情では扱いやすい部類であり、大きな問題はなかったのと、視界感覚が広い設計もプラスに働いているようだ。ただ、マルチビューカメラがない場合に、先代にあったサイドサポートビューミラーがなくなってしまった点は残念である。

最後に、地味ながらワイパーの仕掛けが大きく変わった。これはぜひ、動画をご覧いただきたい。

ただ、最後に要望をいうならば、デザイン違いの「エアー」と「スパーダ」で装備差をつけないでほしい。上級装備の「エアー」が出れば、私も先代モデルから乗り換えに欲しいと感じる新型ステップワゴンだった。

フロントシート背面にはUSB充電と、テーブルが装備されている。

サードシートの畳み方は実に巧み。先代モデルからの美点である。

後席用のエアコン操作スイッチ。

試乗車にはオプションの大型のフリップダウンモニターが装備されていた。こういう装備もいいが、パノラミックサンルーフみたいなドライブの道中、乗員みんなが共通の話題で楽しめるような装備も欲しい。

電動スライドドアを閉める際に、先代では体をひねってドア側のレバーを操作する必要があったが、今回からBピラーにスイッチが用意された。

先代モデルにはセカンドシートの様子が見れるミラーが用意されていた。今回はこれが廃止されたのが残念だ。

新型と先代。どちらも販売の中心はスパーダのようだが、「エアー」に上級装備を付けたモデルを用意してほしい。

 

ショールーム一覧はこちら

ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,830mm
全幅…1,750mm
全高…1,840mm
ホイールベース…2,890mm
車両重量…1,840kg

<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,993cc
種類…水冷直列4気筒横置DOHC
最高出力…107kW(145PS)/6,200rpm
最大トルク…175Nm(17.8kgm)/3,500rpm
使用燃料…無鉛レギュラー
トランスミッション…電気式無段変速機

<電気モーター>
種類…交流同期電動機
最高出力…135kW(184PS)/5,000~6,000rpm
最大トルク…315Nm(32.1kgm)/0~2,000rpm

<動力用主電池>
種類…リチウムイオン電池

<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…19.6km/L
・市街地モード…19.3km/L
・郊外モード…20.5km/L
・高速道路モード…19.2km/L

<サスペンション>
フロント…マクファーソン式
リヤ…車軸式

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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