New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
正常進化した6代目の“R”
今年、2022年に50周年を迎えた「シビック」は実に11代目を数える。長い歴史のある車だからこそ、その時代が求めるクルマ像に応じて、クルマの性格付けは変わっている。6代目のシビックに初めて追加されたスポーツモデルが「タイプR」であり、他のホンダ車同様、走りに重点を置いた特別なモデルという位置づけだ。発売前から非常に話題を呼んでおり、筆者自身は歴代そこまで、「シビックタイプR」に強い興味を持っていたわけではなかったが、現行シビックのベースモデルは非常に出来が良く、走りの良さも実感していたため、「タイプR」の登場には大きな期待を抱いていた。
Gocar注目3つのポイント
①痛快なドライビングフィールとはどんなものか?
メーカーのプレスリリースによれば、「運転に夢中できるような痛快なドライビングフィール」と書いてある。どんなところが痛快なのだろうか。
②ポテンシャルを出し切らなくても楽しむことはできるのか?
最高出力330馬力、最大トルク420Nmという大きなパワーを発揮するエンジンを搭載しているが、実際の公道でこのパワーを使い切ることはなかなかできないのも事実である。ポテンシャルを使い切らなくても十分楽しむことはできるのだろうか。
③実用的に使った印象は?
ベースモデルの「シビック」では、パッケージングの巧みさに驚かされた。このタイプRも変わらず、ベースモデルのような使い勝手を持ち合わせているのか、検証していきたい。
エンジンは直列4気筒2.0Lターボエンジンを搭載し、最高出力330馬力、最大トルク420Nmを発揮する。エンジン自体は先代に搭載していたものに改良を加えたものである。組み合わされるトランスミッションは、今時本当に希少な存在の6速マニュアルトランスミッションである。久しぶりにマニュアルトランスミッションのクルマに乗るとやはり楽しい!それが走り始めた第一印象である。シフトフィールもカチッとしていて、ギアチェンジがとても楽しい。また、エンジンもトルクがあり、クラッチミートは割とやりやすいクルマといえるだろう。タイプRというと、どうしても玄人向けのクルマというイメージが強いが、今のシビックタイプRはマニュアルの運転ができる人ならば、そんな大きな戸惑いもなく乗ることができるのも魅力である。
また、低いギアに入れた際には自動で回転数合わせ(ブリッピング)もしてくれるため、本当に滑らかに変速することもできる。
モード切替スイッチも用意されており、とりあえずは「コンフォート」モードで走ってみる。コンフォートモードでもベースのシビックに比べれば、やはり路面のざらつきを、ステアリングやシートに伝えてくるのは否めない。しかし、「スポーツ」モードに変えれば、もっとダイレクトに伝えてくるので、やはり街中を走る際には「コンフォートモード」で走るのがちょうど良さそうである。特に速度が50~60km/h以上になってくると、よりしなやかさが増す印象である。
スポーツよりもさらに走りを重視した「+R」というモードもあり、こうなるともっとスパルタンな印象に変わる。昔のタイプRはこれくらいの味付けが標準で、モードの切り替えなどなかったわけだが、今は電子制御を駆使して、快適志向にしたり、スポーツ志向にしたりと状況に応じて変化できるあたりがやはり魅力的である。
「+R」モードにすれば、排気音などもより迫力を増し、なかなか気持ちの良いドライビングフィール、これこそ「痛快な」走りが楽しめる印象である。特に4,000回転を超えたあたりがなかなかの快音が聞こえてくる。しかし、街中で乗るとかなり足回りは硬くなり、常に体がゆすられる印象になってしまう。もちろん、サーキットを走る際にはこの「+R」モードが良く効くと思われる。
そこで、「インディビジュアル」というモードが用意されている。「+R」モードという味付けをベースにしながらも、サスペンションを快適志向にしたりと個別で変更できるのだ。エンジン、ステアリング、サスペンション、エンジンサウンド、レブマッチ、メーターの6項目を決められる。これで自分好みの味の組み合わせを決めておいて、選べば、自分の理想像が出来上がるわけである。
最新テクノロジーは他にも盛り込まれていて、パーキングブレーキは電気式である。さらに、「オートホールド機能付」ブレーキも用意されていて、停止後ブレーキペダルから足を放しても、停止状態を保持してくれる。これが、坂道発進の際に非常に重宝するわけだ。クラッチミートをして、発進すれば、ブレーキは自動でリリースされるため、後ろにずり下がることはない。先行して昨年乗った「N-ONE RS」でもとても感激したが、このタイプRも同様に非常に安心して坂道発進ができる。
痛快さは音の演出、スムーズに回転するエンジンフィール、さらにはちょっとした交差点を曲がった際の自然なフィーリングなどに感じることができる。一言で「気持ちいい」と感じられるフィーリングだ。「+R」モードでのステアリングのフィーリングはかなり重たさを感じ、いかにもスポーツモデルといった印象だ。
センターディスプレイでは様々な情報を見ることができたり、サーキットではGPS機能を用いて、スピードリミッターを解除することもできる。
世の中は「自動車の電動化」で大賑わいの中、「シビックタイプR」のようなモデルは本当に希少な存在であるし、ひょっとすると電動化されていない、ピュアスポーツのシビックタイプRは最後になるかもしれない。そう考えると本当に大切にしたいし、所有欲が湧き出てくる1台であったことには間違いないだろう。
<まとめ>Gocar注目3つのポイント
①痛快なドライビングフィールとはどんなものか?
正に痛快であった。特に「+R」モードでの音、MTの操る楽しさ、エンジンフィールすべてにおいて、痛快であった。
②ポテンシャルを出し切らなくても楽しむことはできるのか?
インディビジュアルモードにすることで、自分好みのモードの組み合わせにすることで、全能力を出し切らなくても楽しむことができた。
③実用的に使った印象は?
これは動画の「サイズチェック」をご覧いただきたいが、ベースのシビック同様に空間の広さ、使い勝手は実用車として十分にこなせる1台であった。
ホンダ シビック タイプR主要スペック
全長…4,595mm
全幅…1,890mm
全高…1,405mm
ホイールベース…2,735mm
車両重量…1,430kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,995cc
種類…:水冷直列4気筒横置DOHC
最高出力…243kW(330PS)/6,500rpm
最大トルク…420Nm(42.8kgm)/2,600~4,000rpm
使用燃料…無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション…6速マニュアル
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…12.5km/L
・市街地モード…8.6km/L
・郊外モード…13.1km/L
・高速道路モード…15.0km/L
計測(Go!Carチャンネル計測値、おおよその値)
前席シート
シート高さ(地面から):42~47cm
座面幅:31.5cm
シート長:51cm
背面幅:29.5cm
後席シート
シート高さ(地面から):54cm
膝回り空間:14cm
ラゲッジルーム
地面から入口高さ:68cm
入口横幅(狭いところ):90cm
入口横幅(広いところ):116cm
横幅(広いところ):130cm
横幅(ホイールハウスで狭くなっているところ):102cm
トノカバー使用時の高さ:50cm
奥行:92cm
奥行(後席可倒時):175cm
バックドア取っ手までの高さ:176cm
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。