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DS AUTOMOBILES セダン
2022.08.05

Vol.11 【DS 9 オペラ ピュアテック】

Vol.11 【DS 9 オペラ ピュアテック】

DSの源流、シトロエンで見れば、日本市場としては「シトロエン C6」以来、約12年ぶりの導入となる、Eセグメント級のフレンチサルーン。

12年ぶりの復活!フレンチサルーン

 

今回試乗したのは1.6Lガソリンターボエンジンを搭載した上級グレード「オペラ」である。

“セダン離れ”という言葉が聞かれるようになり久しいが、それにしても日本のみならず世界中が「SUV=スポーツ・ユーティリティ・ビークル」にとことん人気が集まっている昨今。旧グループPSA、現在のステランティスグループのプレミアムブランドを担う「DSオートモビル」もこれまで、「DS 7クロスバック」や「DS 3クロスバック」といったSUVのモデルしか用意されていなかった。しかし、プレミアムブランドといえば、必ず「セダン」が用意されており、DSのセダンはいつ出るのだろう…と筆者も待ち焦がれていた。

しかし、今世界でセダンが人気の市場は「中国」。ヨーロッパや中国への導入が優先され、日本への導入が遅れてしまったからこそ、待望の日本導入である。本国で発表された写真を見ては、楽しみで仕方ない1台であった。

そして、今回やっと日本へ導入され、試乗することができた。今回、「DS 9」はガソリンと、プラグインハイブリッドの2本立てで、ディーゼルは用意されない。試乗したのは旧グループPSAではおなじみの1.6Lガソリンターボエンジンを搭載したモデルである。このパワートレインのラインナップからしても、やはり中国市場をかなり重視していることがよくわかる。

流れるような美しいルーフラインはさすが全長が4.9m台のクルマだけある。後席の頭上空間には問題なく、後席の広さ感は相当なものだ。

まずインテリアに乗り込んで感じたのは「DS 7クロスバック」のインテリアに非常に似ているところだ。先に紹介した「DS 4」は最新モデルらしく、すべてが新しかったが、日本へ導入された時期は近かったものの、本国での発表は早い時期だった「DS 9」は先に登場している「DS 7クロスバック」のインテリアに極めて近い。B.R.Mの時計が立ち上がったりするあたりも共通である。しかし、ワイン系のインテリアカラーはさすがといった印象である。また、インパネの仕上げかた、ルーフ、グリップあたりの高級感はさすがフラッグシップモデルである。

ワイン系のインテリアカラーは他の国ではなかなか用意されない。さすが、フランスといった印象だ。

「DS 7 クロスバック」でもおなじみ、B.R.Mの時計が装備されている。

グリップも革巻で驚いた。ルーフの素材も高級感がある。

「DS 7クロスバック」や「DS 4」でも採用されていた「DSアクティブスキャンサスペンション」が装備されている。フロントに装備されたカメラで道路の先を読んで、サスペンションの味付けを最適化するというものである。「コンフォート」モードにすると、この機能が働く。「DS 7クロスバック」では、この機能に関してとても感激したし、この前に試乗した「DS 4」でも魅力を感じたが、実は「DS 9」ではそれらのような感激にはやや欠けるところがあった。一つの要因はタイヤがコンフォート系ではなく、ミシュランの「パイロットスポーツ4」というスポーツタイヤを履いているからかもしれない。また、プラグインハイブリッドとガソリンでは重量もおよそ300kg差があり、今回乗ったガソリンモデルに関しては、高級感らしい重厚感という雰囲気とは少し異なっていた。

先進運転支援のみならず、乗り味を変更するためにも使うカメラ。

タイヤにはミシュランの「パイロットスポーツ4」が採用されていた。

「スポーツ」モードにすると、乗り味はやはりかなり固めになり、路面のざらつきをよく感じるようになる。快適志向の「DS 9」は「コンフォート」モードがピッタリな印象だった。街中では「エコ」モードで十分な印象だ。

プレミアムカーらしく、感心させられたのは音の静かさだ。特にロードノイズの静かさなども感心させられた。

直列4気筒1.6Lエンジンは、大きな不満のないパワーユニットではあるが、プレミアムモデルとして昔の6気筒を懐かしみたくなる部分もある。

このクルマのセグメントの中心はやはりドイツ車であるが、日本において特に「スポーツパッケージ」的なモデルが多い中で、この「DS 9」はそれらとは違うベクトルを目指しているのが嬉しいところだ。

センターにはアクセントとなるラインが入っているが、ボンネットはスラントノーズになっており、先端見切りの役には立っていないのは少し残念なところ。機能を持たせたデザインになっていたらより感激したのだが…。

「DS 9」は後席もかなり重要視しているようである。後席に座るととにかく広い。膝回り空間は20cm以上あいている。流麗なデザインで、頭上空間の心配をしていたが、その心配もなくゆったり座れた。また、今回の「オペラ」には後席のマッサージ機能、シートヒーター、ベンチレーションが用意されている。これでも相当驚かされるのだが、さらに後席が可倒式になっているのにも驚かされた。実用性も考えているあたりは、さすがフランス車である。

乗り味は後席に乗ってもやはり想像していたような、フランス車らしいソフトな味ではなかった。

後席の広さ感はかなり気持ちのいいものであった。シートヒーターはもちろん、ベンチレーションに、マッサージ機能。至れり尽くせりである。

後席はヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能がついているのに可倒式。実用性を大切にするフランス車らしいところだ。

筆者が注目する3つのポイント

①フランス車ならではのセダンの魅力

特に斜め後方から見たデザインは魅力的である。本国ではルーフの後端にターニングシグナルが装備されて、より個性を感じたが、日本では法規上採用することができなかった。これはインポーター側から、法規変更を迫ってほしい。高い位置にあれば、2~3台後ろのクルマからでも認識しやすい場合があろう。

エクステリアデザイン、インテリアデザインとも、ドイツ勢のような「スポーツ」仕立てのようなモデルではなく、エレガントさを重視したベクトルは希少である。後席のゆとり、後席での快適性はドイツ車にはない魅力だと感じた。

②C5やC6のような特徴は受け継いでいるのか

テールランプのデザインは、実に個性的。

以前のシトロエン系のサルーンのような個性はあまり感じられなかった。文中でも申し上げた通り「DS 7クロスバック」に近い雰囲気を醸し出しており、SUVにはあまり興味がなかったが、DS 7の個性が気に入っていた方にはピッタリなクルマだろう。

③後席の快適性

後席の広さ感はかなり気持ちのいいものであった。シートヒーターはもちろん、ベンチレーションに、マッサージ機能。至れり尽くせりである。

後席用マッサージの操作スイッチ。

大きなセンターアームレストも快適なドライブに重宝する。

広さ、快適装備、背もたれの角度など、後席をかなり重視している一台であることが実感できた。

ただ、一方で全体的に「乗り味」に関しては、事前に期待していた「DS」らしい乗り味とややテイストが違った印象に感じたのは事実である。かなりコンフォート性を重視したモデルでありながら、235/45R19という太くて、偏平率の低い、スポーツタイヤを履いているのが少し影響しているのではないかと感じた。また、もう一つ感じたことは「DS 9」の本命はPHEVモデルかもしれないというところである。車両重量を増して、どっしりとしたフィーリングがきっと感じられ、「DSアクティブスキャンサスペンション」の効きがより感じられるのではないかなと期待する。今回は試乗できなかったが、またPHEVモデルの試乗車が用意されたら取り上げてレポートしたい。

ドアハンドルは格納タイプ。このドアハンドルが実に扱いやすい。

OPERAにはスライディングサンルーフが装備される。

DSの魅力はゆったりとしたサイズのシート。こちらもシートヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能が装備されている。

デザインはさすがDSといった印象である。

インパネ周辺の高級感も魅力的だ。

高級オーディオ「フォーカル」のオーディオシステムが装備されている。

パワーウィンドウなどは中央に集中されており、パッセンジャーの人も操作がしやすい。

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DS 9 OPERA PureTech(DS 9 オペラ ピュアテック)主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,940mm
全幅…1,855mm
全高…1,460mm
ホイールベース…2,895mm
車両重量…1,640kg

<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,598cc
種類…ターボチャージャー付直列4気筒DOHC
最高出力…165kW(225PS)/5,500rpm
最大トルク…300Nm/1,900rpm
使用燃料…無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション…8速オートマチック

<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…15.0km/L
・市街地モード…11.9km/L
・郊外モード…14.7km/L
・高速道路モード…17.2km/L


<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット
リヤ…マルチリンク

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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