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DS AUTOMOBILES コンパクトカー
2022.07.01

Vol.10 【DS 4 リボリ ブルーHDi】

Vol.10 【DS 4 リボリ ブルーHDi】

きっとこの先、DSブランドの中心を担っていくであろう「DS 4」が登場した。シトロエンブランドのDSラインにも「DS4」は存在していたから、今回のモデルで2世代目となるが、中身は全く異なるもの。元気のいい、プジョー・シトロエン・DSブランドだけあって、期待も高まって当然だ。どんなクルマに仕上がっているのかをレポートする。

これぞ新時代の“小さな高級車”

今回試乗するのは「リボリ ブルーHDi」で、定評のある1.5Lディーゼルターボエンジンを搭載したモデルである。

今は、プジョー、シトロエン、DS、さらにフィアットやアルファロメオなどの旧FCAのブランドも含めて、「ステランティス」という大きな自動車メーカーとなったため、なかなか話しづらくなってしまうが、「DS」というブランドはプジョー・シトロエンの旧グループPSAのプレミアムブランドとして2014年に登場した(厳密にいえば、シトロエンから独立した)ブランドだ。当時は、DS 3や、先代のDS 4、DS 5があったが、シトロエン時代からの継続モデルということもあり、DSブランドが独立してからのモデルは「DS 7 クロスバック」や「DS 3 クロスバック」のみの展開が長く続き、SUVのみの展開だった。しかし、今回「DS 9」というプレミアムサルーン、そして今回のCセグメントとやっとDSの広がりが見えてきて、これからの展開にワクワクするところである。

今回の試乗では今回取り上げる「DS 4」と同時に「DS 9」も同時に試乗をしたが、これは次回のVol.11にてご紹介する。

今回はDSの新モデル「DS 4」と「DS 9」を同時に試乗をした。DS 9のレポートは次回お送りする。

「DS 4」は2022年1月にパリで開催された「第37回国際自動車フェスティバル」にて「世界で最も美しいクルマ」に選出されたそうだ。確かに、これまでのCセグメントモデルといえば、実用性が第一で、「美しい」「エレガント」といったイメージのクルマはなかったように感じる。しかし、今回のDS 4はこれまでのCセグメントではなかったような、流麗さ、エレガントさが感じられるのは新しいところだ。そして、もちろん、DSらしい「ラグジュアリー」もしっかり盛り込まれている。

フロントフェイスはこれまでのDSブランドに共通する部分が多いが、Sの文字をかたどったデイライトの部分が新しい。

なだらかに下がるルーフラインが美しいが、後席の頭上空間には大きな問題はなかった。

従来のCセグメントハッチバックとは明らかに違う独特なスタイリング。

全長は4,415mm、全幅は1,830mm、全高は1,495mmということで、Cセグメントとしてはやや長い。幅に関しては一昔前に比べれば、幅広いが、ここ最近はこれくらいの幅が当たり前になった。また、全高は1,550mm以下で抑えられているのも嬉しいところである。

パワートレインは、メーカーが強くアピールしている「パワーオブチョイス」で、3つのパワートレインから選べる。今回試乗するのは1.5Lディーゼルターボエンジンだが、それ以外に直列3気筒の1.2Lターボエンジン、さらに1.6Lガソリンターボエンジン+電気モーターのプラグインハイブリッドが用意される。

筆者が注目する3つのポイント

①プレミアムカーとしてどうなのか

②「シトロエン C4」や「プジョー 308」とどのように差別化されているか

③新しいインフォテイメントシステムは使いやすいか

これら3つのポイントを中心にDS 4の試乗をしてみたい。

今回試乗する「DS 4」には、「DS 7クロスバック」にも採用されていた「DSアクティブスキャンサスペンション」が装着されている。これはフロントスクリーン上部に設置されたカメラで道路の凸凹を見ながら、最適なサスペンションの味付けにするというシステムであるが「DS 7クロスバック」のそれは完ぺきとは思えないものの、なかなかの気持ちのいい乗り味を提供してくれて、感激したものだった。それが、このCセグメント級のモデルに採用されたこと自体に驚かされる。

しかし、まずは通常の状態を知りたいため、ドライブモードは「ノーマル」でスタートする。DSアクティブスキャンサスペンションを働かせるには「コンフォート」モードにすればいい。

左下にある、モード切替スイッチで「コンフォート」モードにすれば、DSアクティブスキャンサスペンションが働いてくれる。

ノーマルモードで走り始めて、少し意外だったのはいかにもフランス車らしいソフトな印象ではないところだ。19インチのホイールを履いているということもあり、ややそのあたりが乗り味に影響しているような印象だ。ただ、もちろんゴツゴツしたような乗り味ではなく、昔ながらのフランス味ではないという意味だ。

205/55 R 19という独特なタイヤサイズ。最近プジョー、シトロエン、DS系が採用するタイヤは幅は狭く、ホイール径が大きいものが多い。

ミシュランの「eプライマシー」を履いていた。

①プレミアムカーとしてどうなのか

エンジンは筆者自身がほれ込んで、自身もこのエンジンを搭載したクルマに乗っているから、言うことはない。低回転から十分なトルクを発揮し、気持ちよく回ってくれる。そして、なにより軽快な印象が気持ちいい。それに加え、このDS 4で驚いたのは音が静かなこと。もともとはこのエンジンは音が静かなのにもかかわらず、それにも増して静かだ。サイドガラスにはラミネートウィンドウが採用されていたりと、このあたりはプレミアムブランドだけあり、細かな配慮がなされている印象だ。

エンジンは1.5Lディーゼルターボエンジン。最高出力130馬力、最大トルク300Nmを発揮する。

それでは早速「コンフォート」モードにしてみよう。こうすれば、早速「DS 7 クロスバック」で味わったような、路面の凹凸をうまく超えていく乗り味が提供される。しかし、それが「ソフト」かというとソフト過ぎない。

②「シトロエン C4」や「プジョー 308」とどのように差別化されているか

「ソフトな乗り味」ならば、「シトロエン C4」の方がよりソフトな印象だ。

以前、紹介した「シトロエン C4」の乗り味は明らかに「ソフト」だ。

先進運転支援システムにも使われるが、DSアクティブスキャンサスペンションの仕事もこなす。

ステアリングのフィーリングは、C4ほど軽くなく、割と308に近いが、ステアリング径が全然違うので、操作フィールは全く異なる。

308とC4の間くらいのステアリング径の印象だ。C4ほどは軽すぎない。

インテリアはプレミアムカーとして魅力的な印象。Cセグメントまでここまで作りこんだ車というのはそうはないと思う。

最近、「シトロエン C4」、「プジョー 308」、そして「DS 4」と矢継ぎ早にCセグメントモデルを投入しているが、実はクルマの土台となるプラットフォームはC4だけは「CMP」と呼ばれる、「プジョー 208」や「2008」、「DS 3 クロスバック」で採用していたBセグメント級のプラットフォームを使っている。しかし、308とDS 4は「EMP2」と呼ばれるもう一回り大きなプラットフォームの最新型(V3)を採用しているところがまず異なる。

乗り味は先に申し上げた通り、一番ソフトなのは「C4」、そして「DS 4」のコンフォートモード、そして308は3つの中で順序を付ければ、一番硬い部類だろうが、硬い乗り味ではない。サスペンションはしっかり動きながらも、揺れをスパッと抑えるプジョーの猫足が今も残っている。

新型「プジョー 308」の乗り味はまさしく「猫足」。C4やDS 4ほどソフトではないが、しなやかに動くサスペンションが与えるフィーリングはやっぱり気持ちいい。

また、スポーツモードも用意されている。エンジンの瞬発力は多少良くなった印象はあるが、130馬力なのでそこまで伸びが期待できるというほどのものではない。乗り味に関してはややスポーティな印象で固めにはなるがゴツゴツしすぎるほどではない。ステアリングの重さは結構重たくなる印象だ。

③新しいインフォテイメントシステムは使いやすいか

今回新たに採用されたインフォテイメントシステムは「DSアイリスシステム」と呼ばれているが、センターの10インチディスプレイと、メーター部の液晶、そしてヘッドアップディスプレイが装備されている。特にヘッドアップディスプレイは極めて見やすく、内容もいろいろ変えられ(液晶メーターの部分やセンターディスプレイも自分好みにカスタマイズできる)、今回のDS 4の大きな魅力だ。

センターには大きな10インチのディスプレイが装備されている。

今回、DS 4に試乗して最も驚いた装備の一つとしてはこのヘッドアップディスプレイがある。ナビの表示まで鮮明にわかりやすく、映し出すのには驚かされた。

ナビゲーションに関してはここ最近は、日本製のナビゲーションを組み込み表示させるか、もしくはスマートフォンのアプリでApple CarPlayもしくはアンドロイドオートを使って表示するという形だったが、今回はコネクティッドナビゲーションが装備されている。おかげで、このようなヘッドアップディスプレイに表示できるわけだ。

また、これも一つの流行ともいえるかもしれないが、音声認識システムを採用している。「OK、アイリス」と呼び掛けて、依頼を言うと操作してくれる(実演は動画の試乗インプレッションをご覧ください)。エアコンの温度など音声で認識してくれるのは嬉しい。ナビの設定ももちろん可能だ。

またセンターコンソール付近にタッチパッドが用意されて、そこでは日本語の手書き入力にも対応している。

タッチパッドでは日本語入力に対応している。

レザーシートの質感は魅力。さらに、シートヒーターに加え、ベンチレーション、さらに「マルチポイントランバーサポート」と呼ばれるマッサージ機能も装備されている。

エアコンの吹き出し口をデザインに自然に埋め込ませている。

もちろん、先進運転支援システムはしっかりと装備されている。先行車に追従するACCや、ステアリングもアシストするレーンポジショニングアシストも装備され、ロングドライブでも重宝する。また、ブラインドスポットモニターはロングレンジ(遠方から作動可能)になり、ドアミラーに点灯するマーキングも従来の小さな●から、大きめの▲になったのもとてもいい(これも動画をご覧ください)。

運転支援システムの操作スイッチは従来のようなステアリングコラムから、ステアリングスポークへ移設されたのが嬉しい。

コンフォートモードでは1枚“膜”を張ったような乗り味になる。これがやはり気持ちがいい。Cセグメントでこのような乗り味が味わえるのはとてもうれしい。スポーティテイストを強調するクルマが多い中、コンフォート性、ラグジュアリー性をアピールするDS 4は貴重な存在だ。

後席はシートのゆったりした、あたりのソフトな座り心地がいい。頭上空間もあいている。膝回り空間は広くはないが十分といった印象だ。ただ、頭上空間を確保するためなのか、やや着座位置を下げているのか、膝が持ち上がる印象があるのが多少気になる。

後席は膝回り空間は広々とまではいかないが十分な印象。頭上空間はゆったりしている。

最後に要望を言うならば、やはり本国にあるように内装色が黒だけではなく、明るい内装色も選べるようになっててほしいこと。そして、スライディングサンルーフがPHEVでは装備できるものの、ディーゼルには初期限定モデルしか装着できないことだ。ぜひ、これは全車オプションしてもらえるようにしてほしい。

全体的にとても魅力的なクルマで、こんなサイズで、これくらい装備が充実した高級車というのを欲しかった人は多いのではないだろうか。「DS」ブランドの認知度も上げてくれるであろう、「DS 4」。ぜひ、実車に触れていただきたい。

彫刻のようなテールランプはDS 4でも採用された。

リヤの窓ガラスにも細かいデザインが施されている。

細かなディテールが凝っている。

ドアハンドルはロックをするとフラットになる。

グリルのデザインも非常に特徴的。

Sの文字をかたどったデイライトは2本に分かれているのも凝っている。

パワーウィンドウスイッチはメーカーによれば、人間工学に基づいた位置だそうだ。

トランクルームも十分な空間だ。

もちろん、可倒式リアシートなので、大きな荷物を載せたい場合にもフレキシブルに対応してくれる。

ショールーム一覧はこちら

DS 4 RIVOLI BlueHDi(DS 4 リボリ ブルーHDi)主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,415mm
全幅…1,830mm
全高…1,495mm
ホイールベース…2,680mm
車両重量…1,420kg

<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,498cc
種類…ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)
最高出力…96kW(130PS)/3,750rpm
最大トルク…300Nm/1,750rpm
使用燃料…軽油
トランスミッション…8速オートマチック

<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…21.2km/L
・市街地モード…16.8km/L
・郊外モード…21.2km/L
・高速道路モード…23.9km/L


<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット式
リヤ…トーションビーム式

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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