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BMW SUV
2022.09.16

Vol.13【BMW iX3 Mスポーツ】

Vol.13【BMW iX3 Mスポーツ】

今回はBMWのミディアムサイズSUV「X3」に新たに追加された、100%電気自動車「iX3」を取り上げる。

100%電気でも“駆け抜ける歓び”を!

2021年の10月にマイナーチェンジが施された、BMWのミディアムサイズSUV「X3」に新たに、パワーユニットとして100%電気モーターを搭載した「iX3」が登場した。今となっては、各メーカーが様々な電気自動車を投入してきているが、実はBMWはかなり早い段階、今から8年も前に「i3」という電気自動車をすでに投入していた。ただ、デザインがかなり個性的であったり、初期のものは特に電気モーターでのみの航続可能距離が短く、カーボンを多用したこともあり、価格が高く、一般にはなかなか理解されにくかった部分もあった。しかし、一方で「レンジエクステンダー」仕様は発電機用エンジンを搭載することで、緊急時にはガソリンがあれば走ることができるモデルも用意されていたところは魅力的なところだった。

外観から見れば、グリルやその他のパーツが内燃機関モデルと多少違うが、ぱっと見、内燃機関なのか、電気自動車なのかはわからないだろう。

まず外観を見たところでは、内燃機関モデルもマイナーチェンジをしたこともあり、多少のデザインの変更があったようだ。「iX3」は電気自動車なので、エンジン車のようなクーリングが必要ないこともあり、グリルに穴が開いていない。そんなところから、この車は電気自動車であるということが徐々に見えてくるだろう。

全世界的に見ても、電気自動車はSUVで成立させる場合が多い。航続距離を長めにとるならば、多くのバッテリーを搭載しなければいけないわけだが、SUVはそれに都合がいいわけである。iX3は80kWhのバッテリー容量を誇る。iX3はボディサイズもDセグメント系のSUVということもあり、BEV化にしやすかったのだろう。

この「iX3」は内燃機関モデルと大きく違うのは駆動方式である。内燃機関モデルは4輪駆動を採用しているが、このクルマは実は後輪駆動なのである。後輪に電気モーターを備えて、後輪を駆動させている。

電気自動車を走らせるときには「回生ブレーキ」の使い方が一つ注目すべきポイントであるが、この車の場合は回生ブレーキの強さをセンターのディスプレイで3段階で切り替えることができる。

BMWのデザイン・アイデンティティともいえる「キドニーグリル」。誰が見ても「BMW」らしいが、電気自動車ということもあり、内燃機関のクルマのような穴は開いていない。

加速性能に関しては、電気自動車はどれもがそうであるが、0回転から最大トルクを発生することもあり、力強い。最大トルクは400Nmを発揮する。さらに、モード切替スイッチがあるから、「スポーツ」モードにすればさらに勢いは増している。

電気自動車とはいえ、やはりベースはX3であるということから、操作や運転に戸惑うということはない。これまでのBMWに乗ったことがある方なら、ごく普通に操作することができる。

SUVは全高が高いため、どうしても重心高が高くなる。しかし、「iX3」は重たいバッテリーを床下へ設置することで、重心位置を下げることに役立っている。そういう点からすれば、ハンドリングの気持ちよさは内燃機関モデルよりもいいと思える場面もあるかもしれない。なお、スポーツモードにするとステアリングの重たさを増すことができる。

20インチのホイールを履いているMスポーツではあるが、思ったほどゴツゴツしていない。もちろん、ドイツ的な硬さはあるのだが、不快に感じるものではなかった。

試乗車には20インチのアルミホイールを装着していた。見た目ほど乗り味はゴツゴツしておらず、ドイツ車らしい味が魅力的だった。装着タイヤはブリヂストンの「アレンザ」だ。

 

シフトレバーを左側に倒すと、Bレンジでワンペダル走法が可能になる。

Bレンジに入れると、電気自動車での特徴でもある「ワンペダル走法」、つまりアクセルペダルを離すだけで完全停止までもっていくことができる。

パノラミックサンルーフはガラス部分が大きく、開口面積を考えていることもあり、サンルーフを開けても、後席でもしっかり開放感を感じられる。

「X3」自体は登場してから5年が経過するが、熟成を重ねてより魅力的なモデルへ進化していることが感じられた。特に、先進運転支援システムやインフォテイメントシステム系の進化具合も含めて、魅力に感じるポイントが多かった。

「iX3」のリチウムイオンバッテリーの容量は80kWh、航続可能距離はWLTCモードで508kmと公表されている。長距離でクルマを使うことが多い方はこれでもまだ不安に感じる部分があるかもしれないが、街中をごく普通に乗るケースが多い方ならば十分な容量だろう。もっとも「X3」にはガソリンも、ディーゼルも、プラグインハイブリッドも用意されている。オーナーがどのように使うかで、いろいろと用意されているパワーユニットから選べるのが嬉しい。

エンジンフードを開けてもご覧の通り。

一昔前ではかなり大きく感じるサイズだが、最近の輸入メーカーのSUVの中では扱いやすいサイズの方だ。

 

Gocar注目3つのポイント

「BMW iX3」と筆者。

①誰にでも受け入れられやすい電気自動車になっているか?

今回の「iX3」はベースが、これまでに内燃機関モデルとして販売されてきた「X3」ということもあり、特に扱いに驚くこと、不満に思う点はなかった。逆に「電気自動車」らしい新しさを感じたいという方にとっては、例えば「iX」に比べると面白くないと思える部分もあるかもしれない。しかし、多くの方に受け入れてもらうため、幅広くBEVを普及させていくということを念頭に置けば、この方針がいいのだろうという印象だ。

メーター周りは先進的ではあるが、内燃機関モデルでも採用されているデザインで、まさに今のBMW。

②電気自動車でも“駆け抜ける歓び”は味わえるのか?

今までの内燃機関と同じテイストの「駆け抜ける歓び」ではない。しかし、やはり「電気モーター」の特徴である0回転からシームレスにグイグイと加速していく勢いはやはり気持ちいい。また、内燃機関モデルより重心位置が低いので、ハンドリングの気持ちよさは「iX3」の方が気持ちいいと感じる方もいるのではないだろうか。

「Bayerische Motoren Werke GmbH」の頭文字をつなげたものがBMWの語源。バイエルン州のエンジン工場という意味だが、このクルマにはついにエンジンは搭載されていない。

③ガソリン車同様のSUVらしい使い方ができるのか?

使い勝手については、「Go!Carチャンネル」の「計測編」をご覧いただきたいが、実に室内の広さや使い勝手がよく、魅力的に感じられた。

前席の着座位置は地面から650mm前後。極めて乗り降りのしやすいシート高さである。

後席空間は高さ方向と長さ方向どちらにも余裕がある。下の2枚の写真のようにリクライニング機構が装備されているのも嬉しい。

背もたれをより立てた場合。

背もたれを寝かせた場合。

トランクルームは実に使い勝手がいい。電気式のテールゲートはもちろんだが非常に開口部も大きく荷物の載せおろしがしやすい。

4人乗った状態でもセンタースルーで長尺物を載せることができるのも嬉しいところだ。

もちろん、後席全体を倒して、トノカバーも外せば広大なラゲッジスペースが現れる。

BMWらしさを残しながら、先進的なイメージを随所にデザインしている。

電気自動車ならではの機能はセンターディスプレイでいろいろと操作可能である。

急速充電ソケットは運転席側のリヤフェンダーに用意される。

普通充電ソケットは助手席側フロントフェンダーに用意される。

電気自動車でもしっかりと「駆け抜ける歓び」を堪能できる1台だった!

ショールーム一覧はこちら

BMW iX3 Mスポーツ主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,740mm
全幅…1,890mm
全高…1,670mm
ホイールベース…2,865mm
車両重量…2,200kg

<原動機>
種類…交流同期電動機
定格出力…80.0kW(109PS)
最高出力…210kW(286PS)/6,000rpm
最大トルク…400Nm(40.8kgm)/0~4,500rpm

<駆動用バッテリー>
種類…リチウムイオン電池
総電圧…345V
総電力量…80.0kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)…168Wh/km

<駆動方式・一充電走行距離>
駆動方式…後輪駆動(RWD)
一充電走行距離(WLTCモード)…508km

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は500車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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