New!Car試乗記

最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー

HYUNDAI ステーションワゴンSUV
2022.10.28

Vol.17【ヒョンデ アイオニック5 ラウンジ AWD】

Vol.17【ヒョンデ アイオニック5 ラウンジ AWD】

2022年10月より、「ヒュンダイ」改め「ヒョンデ」を新たに取り扱うホワイトハウスグループ。2000年代の「ヒュンダイ」時代にもホワイトハウスグループはオートプラネット内にディーラーを構えていた。今回は電動化車両のみに特化して、今回取り上げる「アイオニック5」に加え、燃料電池自動車(水素を燃料として、空気中の酸素と水素の化学反応でできた電気で走る自動車。排出されるのは水だ。)の「ネッソ」の2車種がまずは導入される。

日本市場向けに徹底的に配慮された電気自動車

この「New!Car試乗記」では、驚くほど電気自動車の紹介が続いている。今回も電気自動車だが、新しいブランドの電気自動車をご紹介する。2022年10月から、ホワイトハウスグループでは韓国の自動車メーカーで、2019年の販売台数ランキングでは世界で第5位をマークした「ヒョンデ」を取り扱うこととなった。とはいっても、従来のような「自動車販売ディーラー」ではなく、クルマを買うのはインターネットのみだ。オートプラネット内にオープンした「ヒョンデ シティストア名古屋」では実車に触れたり、試乗したり、ヒョンデのクルマの魅力を伝えることを目的としており、そこから実際にヒョンデ車を買いたい場合にはインターネットから注文するという新しいスタイルである。

ヒョンデは韓国の本国では、車種も多岐にわたり、北米やヨーロッパではプレミアムブランドの「ジェネシス」も存在している。しかし、今回日本に導入されるのは「電動車両」のみであり、まずはBEVの「アイオニック5」と、燃料電池自動車の「ネッソ」が導入されることとなった。

ぱっと見では、Cセグメントくらいのハッチバックかな?と思えるが、実車を見るとかなりのボリューム感に驚く。全幅は1,890mmある。また、室内空間が広々しているのも魅力的だ。

写真で「アイオニック5」を見たときには「個性的なデザインをしているけれども、オーソドックスな5ドアハッチバックか」と思っていたが、現車を見ると想像よりも大きなボディサイズに少し驚く。

全長は4,635mmで、全幅は1,890mm、全高は1,645mmある。縦横比は全体的にCセグメントハッチバックに近いのかもしれないが、実際はそれらより2まわりは大きい印象で、SUVとハッチバックのクロスオーバーという印象のテイストだ。しかし、実車を見てみると、あちこちディテールが未来的であったり、とても新鮮な印象がユニークである。

パラメトリックピクセルランプデザインと呼ばれる、未来的なデザインのヘッドライト。

バンパー上部が光っているのは半透過塗装技術を利用したライティング。

今回試乗するのは4つグレードがあるうち、最も高い「ラウンジ AWD」というグレードだ。唯一の4輪駆動モデルである。なお、エントリーグレードはバッテリー容量が抑えられ(72.6kWhから58.0kWh)、価格も抑えられたモデルが用意される。

ラウンジには4輪駆動モデルと2輪駆動モデルが用意されるが、大きな違いはホイールのサイズだ。AWDモデルは大きなパワーを受け止めるために太いタイヤと20インチのホイールを履いている。前後輪共に255/45R20だ。なお、他の2WDモデルは235/55R19が装着される。乗り味に関しては、悪くはないが、もう少し路面の凹凸を吸収してほしいと思える場面にも遭遇することがあった。特に低速で走っている際はそんな印象だった。大きな不快感を感じるわけではないのだが、もう少し改良を進めて、より気持ちのいい乗り味になったら嬉しいと感じる。19インチホイールのモデルにも乗ったが、明らかな差があるというほど変化はなかった。しかし、重量がバッテリーを搭載して重たい分、重厚感は感じられた。タイヤも「ミシュランパイロットスポーツEV」というタイヤで、スポーツタイヤを履いているということも乗り味の硬さに影響を及ぼしている印象がある。一方で、タイヤ名に「EV」と入っているように、電気自動車用のタイヤだ。特に、ロードノイズの発生を抑えるよう設計がなされているようで、なるほど走行中のロードノイズの静かさには驚かされた。

ラウンジAWDは前後輪共に255/45R20という太く、ホイール径の大きなタイヤが装着される。2WDモデルの19インチと比較すると、わずかに19インチの方がマイルドに感じるが、大きくは変わらなかった。一方でこのグレードが装着している「ミシュラン パイロットスポーツEV」というタイヤはロードノイズの音が抑えられているのが特徴だ。

前後に電気モーターが搭載されているから、パワーとトルクは相当なもので、最高出力は225kW(305PS)/2,800~8,600rpm、最大トルクは605Nm(61.7kgm)/0~4,000rpmを発揮する。電気モーターはどのクルマでも特性は同じため、フィーリングを伝えるのは今更感があるが、大変な勢いでシームレスに加速していく。WLTCモードでの航続可能距離は2輪駆動よりは短くなり、2輪駆動のラウンジの618kmに比べ、577kmである。カタログのWLTCモードから電費を計算してみると7.03km/kWhである。これも2輪駆動だと7.58km/kWhだから、航続距離を重視したい人は2輪駆動モデルを選んだ方がいいだろう。

なお、筆者が満充電にしてほぼ同じようなコースを走らせたとき(66km走行、7割ほど高速道路、残り3割渋滞なしの一般道)という走らせ方をして、4輪駆動モデルは満充電100%から86%に、2輪駆動モデルは満充電100%から88%という結果だった。どちらにしても、思っていたほど電気の量が減らなかったというのが第一印象だ。また、電力消費は実際に走らせても2輪駆動の方が少なかったことが証明された。4輪駆動はパワーもあり、その分重たくなっているから仕方ないことである。一方で、4輪駆動には4輪駆動の安定感という魅力もあるから、どこに比重を置くかでグレード選びをしていただきたい。

100%の満充電状態からのスタートで…

66km走行した際に、86%を示していた。また、スタート時に航続可能距離が445kmと表示されており、66km走行後の航続可能距離は379kmと表示。その差はぴったり66kmということで、航続可能距離の示す精度の高さにも驚かされた(実はドライバーの走り方や、走りの状況により、まめに航続可能距離の表示が急激に増えたり減ったりするモデルもあり、特に急に減った時の心理的な不安は少なくないが、アイオニック5はそのあたりの不安感を感じさせなかったのには驚かされた)。

モード切替が用意されており「ノーマル」「エコ」「スポーツ」と選べる。私はほとんどの道のりを「エコ」で走っていたが、パワー不足でストレスになるなど全く感じなかった。むしろ、「スポーツ」にした時の勢いの良さに驚かされたほどである。そして、一般道を走行する際には電気自動車ならではの特徴でもある「ワンペダル(i-Pedal)」走法で、ほぼ走らせていた。ブレーキペダルを使わずに、アクセルペダルの踏む・放すで加減速を行う走り方だ。最初慣れないと、発進や停止にギクシャクするが、慣れてしまえば問題ない。

ただ、ひとつ注意していただきたいのはi-Pedalで走行中、アクセルを放し減速をした際にはブレーキランプが点灯するが、いったん止まるとブレーキランプが点灯しない。後続車に現在止まっているという意思表示をするためにも、停止したらブレーキペダルを軽く踏んでおく、もしくはオートホールドブレーキがONになっていれば、ブレーキペダルを踏んですぐ放してもブレーキランプは点灯しているので、後続車へ止まっているというアピールは可能だ。できれば、今後の改善対策として、i-Pedalで停止した際は再発進するまでブレーキランプは点灯し続けるプログラミングをしてもらいたいと感じる。

また、回生ブレーキに関しては様々なモードがあり、どのモードで走るのが一番いいかを探すのがなかなか難しいのも事実だ。エンジン車のエンジンブレーキのように段階的に回生ブレーキをパドルで操作もできるほか、完全停止まではしないけれどもMAXに回生ブレーキを掛けさせることができたり、「AUTO」というモードも用意されている。この「AUTO」ではミリ波レーダーで先行車を見ていて、先行車の動きに合わせて、回生ブレーキの効きを可変するというものだ。この「AUTO」にも回生ブレーキの効きを段階で切り替えられるようになっていて、どのモードで走ればいいかなかなか難しかったが、最終的には街乗りでは「i-Pedal」、高速道路や流れのいい一般道路では「AUTO」で走るのが筆者にとってはしっくり来た。もっとも、高速道路ではACCを使うため、モードをどれにするか選ぶ必要はなかった。

インテリアの印象は正に新世代のクルマ。10年くらい前に、モーターショーのコンセプトカーで見ていたものが現実化した…そんな印象である。さらに、日本市場のことをとことん研究して、使いやすいように考えられた配慮がインフォテイメント系の表示にも見られて、この辺りは輸入車メーカーならドイツ車が一番いいかもしれないと感じていたが、そのドイツメーカー(それもプレミアムブランド)に引けを取らないほどの、利便性の高さだと思う。近くの充電施設の検索も容易にわかるようになっている。

最も感心したのは音声認識の精度の高さだ。ナビゲーションの設定で、住所を音声認識で登録する場合にも一発で設定することができたことに驚いた。

また、電気自動車専用のプラットフォームを採用しているので、クルマとしてのパッケージングが魅力的に感じる部分が多い。特に室内空間の広さがとても気持ちいい。前席はリラックスコンフォートシートという機能がついており(パッセンジャー席は上級グレードのみ)、人間が楽な姿勢にシートを動かすことができる(停車時のみ)。これは充電中にゆったりくつろげるという考え方からだそうだ。また、後席のくつろぎ感などもなかなか気持ちよく、自動車としての新しい提案をしているのがユニークだ。

未来的な印象のインストゥルメントパネル。10年ほど前に見た未来のクルマが現実化した…そんな印象である。電気自動車だから、4輪駆動であってもフロアはフラットで、前席では左右のウォークスルーが可能である。

着座点は高めで乗り降りしやすい。明るい内装色でとても開放的な、気持ちのいいインテリアだ。最初、シート、ステアリングのポジショニングを決めるのが難しかった。オットマンがふくらはぎに当たらないように、メーターにステアリングがかぶさらないように位置して、最終的に細かく調整して決めた。

リラックスコンフォートシートではドライバー席にもオットマンが用意される。グレードによってパッセンジャー席にも用意される。

運転支援システムの充実度合いにも大変驚かされる。衝突被害軽減ブレーキはもちろん、先行車に追従するACC、レーンキープアシスト、レーンポジショニングアシスト、レーンチェンジアシスト機能、ブラインドスポットモニターなどなど非常に充実している。特に高速道路において、車線変更補助機能があり、方向指示器を操作すると、自動的に車線変更をしてくれる(ステアリングに触れている必要がある)。

新しい機能として驚いたのは「ブラインドスポットビューモニター(BVM)」である。方向指示器を操作すると、その方向のメーター部の液晶ディスプレイが斜め後方の死角をカメラで映した映像が表示される。車線変更の時の死角や、交差点での斜め後方の死角をサポートしてくれる。

方向指示器を操作すると、そちらの方向の斜め後方の映像が映し出される。ミラーの代わりに斜め後方の映像を映し出すクルマはあるが、ミラーに加えて、死角となりそうな斜め後方の様子がディスプレイで映し出されるのがわかりやすくていい。

メーター部の液晶ディスプレイには様々な表示が可能で、このAWDモデルでは現在の駆動力配分がわかるようになっている。高速道路を一定速で走るような場合は後輪だけの2輪駆動、発進時などは4輪駆動で走行していることがわかる。

また、ラウンジにはARヘッドアップディスプレイも装着されており、実際の道路に載せて様々な表示(運転支援システムやナビの案内表示)をすることができる。このあたりも非常に先進的である。

AWDモデルは4輪駆動の駆動力配分を見ることもできる。

日本のマーケットを本気で考えていると思うのは、方向指示器とワイパーの位置だ。国産車と同様に、方向指示器は右に、ワイパーは左に位置している。他の輸入車ではなかなかそこまで対応したものはないので、驚かされる部分である。

高速道路を走行中の騒音も、電気自動車はどうしてもエンジンがない分、他の音が気になることがあるが、このクルマは全体的に極めて静かである。先に述べた、EV専用タイヤの効果もあって、ロードノイズも極めて静かだ。風切り音や、その他の音も実によく抑えられている。

サスペンションのチューニングに関してはもう少し改良をして、より快適性をアップしてほしいという印象があったが、全体的に非常によくできた電気自動車であるということが感じられた。次回は、2輪駆動の中間グレード「ボヤージュ」のインプレッションをお届けする。

カラーリングはゴールドのみマットカラーで、より個性的な印象。そのほかのカラーも上質感を感じる。

デザインは割とシンプルだ。

街では結構注目度が高く、多くの人の視線を感じた。

ラウンジにはなんと後席のスライドもパワーで操作ができる。広々としたゆとりの空間が気持ちいい。

トランクルームもゆとりがあり、トノカバーも装備される。

2022年10月29日にオートプラネット名古屋内にオープンの「Hyundai Citystore 名古屋」。

ショールーム一覧はこちら

HYUNDAI IONIQ 5 Lounge AWD(ヒョンデ アイオニック5 ラウンジ AWD)主要スペック

<寸法・重量>
全長…4,635mm
全幅…1,890mm
全高…1,645mm
ホイールベース…3,000mm
車両重量…2,100kg

<原動機>
種類…交流同期電動機
最高出力…225kW(305PS)/2,800~8,600rpm
最大トルク…605Nm(61.7kgm)/0~4,000rpm

<駆動用バッテリー>
種類…リチウムイオン電池
総電圧…653V
総電力量…72.6kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)…142.4Wh/km

<駆動方式・一充電走行距離>
駆動方式…4輪駆動(AWD)
一充電走行距離(WLTCモード)…577km

Writer

Gocar Gocar

Go!Carチャンネルのキャスター。2015年ホワイトハウス入社。2016年3月からGo!Carチャンネルをお送りしているが、免許取得後すぐ各種試乗インプレッションを行っており、これまでに試乗した車種は700車種を超える。毎週日曜日16:00からは「Go!Carライブ」をGo!Carチャンネルにてお送りしており、視聴者の皆さんとのふれあいを毎週楽しんで放送している。
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。

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