New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
北欧からやってきた、100%ピュアEV
スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」。最近では、ヨーロッパの自動車メーカーの多くが「電気自動車」化への加速が著しいが、ボルボはその中でもかなり早くから、電気自動車をはじめとした、電動化へのシフトを表明した自動車メーカーである。2030年には販売するすべての自動車を電気自動車にするという表明をしている。
そのボルボから初めて「100%電気自動車」が登場した。それが「C40リチャージ」である。
また、ボルボの電気自動車は「オンライン販売」のみであり、通常はディーラーに試乗車がないのだが、今回特別に試乗することができた。今後のボルボを占うといっても過言ではない、このボルボ初の電気自動車がどんなクルマなのかをご紹介していく。
最近は、いろいろな電気自動車に乗ることが増えたが、エンジン車のように「エンジンスタートボタン」を押す、もしくは「キーシリンダー」をひねってエンジンをかける…なんという儀式はない。スタートボタンも用意されておらず、乗り込む→座る→シートベルトをする→シフトをDレンジにする→発進。こんな流れなのだ。音がないため、最初は結構戸惑うのが正直なところである。
今回試乗するのは「ツイン」という名の通り、前輪と後輪それぞれに電気モーターを搭載し、4輪を駆動させるモデルである。驚くことに最高出力は400馬力を超える。最大トルクも、660Nmを電気モーターの特性である0回転から発生するのだから、その加速力には驚かされる。なお、前輪にのみ電気モーターを搭載した、シングルモーター仕様も用意される。
走り始めた第一印象は、XC40をベースにしているということもあり、インパネの雰囲気もそうだが、やはりXC40に全体的なテイストは近い印象だ。
ただ、やはり電気自動車であり、長距離走行にも向くように大容量のバッテリーを搭載していること、さらに2基の電気モーターを搭載しているだけあって、車両重量は2トンを超えて、2,160kgもある。その甲斐あって、乗り味に関してはかなりの重厚感を感じることができる。見た目にもかなり大きなタイヤ&ホイールを装着しており、乗り味に関して多少心配していたが、それほど大きな不満を感じることはなかった。硬すぎず、柔らかすぎずという味付けだ。完全に路面の凹凸を感じないわけではない。空気圧が規定値でも高いので、そのあたりは仕方ないのかもしれない。路面のざらつきなどは上手にシャットアウトされている印象だ。大きいギャップではやや突っ張ったようなフィーリングになっている。もう1インチくらい小さなホイールでもいいのでは…と個人的には感じた。
電気自動車では当たり前になりつつある、アクセルの「ワンペダル」で加減速ができるように、センターディスプレイで切り替えをすることができる。これまでの内燃機関車のようにアクセルとブレーキを使った走り方だと、アクセルを放した時の減速感が極めて少ないのが意外であった。
電気自動車は内燃機関を搭載していないため、エンジンの音以外の音が気になったりすることがあるが、このC40リチャージはロードノイズや風切り音も非常に抑えられているのに驚かされる。
ステアリングの印象は極めて軽く操作できるが、こちらもセンターディスプレイで重くすることも可能である。確かにやや重みは増えるが、それでも軽い方だろう。印象としては「しっかり感を増した」感じになる。高速道路を走る際には、この重さを増したステアリングの方がいいかもしれない。
アクセルを強く踏み込むと、体がシートに押さえつけられるほどの勢いで加速する。「ボルボ」というブランドイメージからすると、あまりにもイメージが違いすぎて、やや戸惑うところがあるが、個人的には「C40リチャージ」はシングルモーターモデルで十分満足なのではないかと感じている。それでも231馬力を発生するのだから…。
「ワンペダル」ドライブをONにすると、ブレーキペダルを踏まなくても、アクセルペダルを緩めるだけで強い回生ブレーキが働き、最終的にブレーキペダルを踏まなくても、完全停止まで操作することが可能だ。
ワンペダルドライブOFF時に、回生ブレーキレベルを段階で変えられる、いわば内燃機関車のエンジンブレーキをかけるようなパドルシフトが装備されると、さらに扱いやすく乗れるのではと感じる。Bレンジもないため、ワンペダルドライブOFF時にはフットブレーキに頼るしかないのが少し物足りないところである。
先進運転支援システムは、ボルボの最新モデルだからしっかりと踏襲されている。ステアリングを積極的にアシストする「パイロットアシスト」もしっかりと装着されている。
Gocar注目3つのポイント
①他の電気自動車とどう違うのか?
正直な話、様々な電気自動車に乗る機会が最近は非常に多いが、「電気」というパワーユニットにおいて、差別化を付けるのは極めて難しい印象がある。電気モーターの特性は0回転から最大トルクを出すわけで、アクセルを床まで踏めば、勢い良く加速するのも、勢いの多少の違いはあれどどの電気自動車でも体感できることである。もちろん、音は静か。そういう点からすると、そのメーカーの個性を出すには、サスペンションのフィーリングや、インテリアの雰囲気などで違いを出していかなければならないだろう。
この「C40リチャージ」の魅力としては、ベースとなるXC40のパッケージングのうまさ、室内空間の広さやラゲッジルームの使い勝手を活かしたまま、流麗なクーペ風のスタイリングにしたところだろう。
②V40の後継を担えるか?
ボルボのエントリーモデルを担っていた「V40」の生産が終了し、後継モデルがこの「C40リチャージ」であるという話がメディアで報じられたことがあった。現に、今ボルボで最もコンパクトなモデルがこの「C40リチャージ」であるわけだから、実質的後継車であるのだが、やはりサイズは特に幅方向で広く、V40の感覚からすると、エントリーモデルというのは難しい。スタイリッシュなモデルの実用車という点はV40と共通するところはあるのだが…。
③新しいインフォテイメントシステムは使いやすいか?
新たにGoogleのアンドロイドシステムが搭載され、ナビゲーションの表示も含め、メーターやセンターディスプレイの表示が変わった。特にナビゲーションの地図表示は以前は小さかったが、今回は大きくなったのもいいところである。Googleマップが表示され、スマホでも馴染んでいるという方は嬉しいのではないだろうか。また、音声認識システムも採用されて、エアコンの温度操作も音声で変更することができる。
Volvo C40 Recharge Twin (ピクセルLEDヘッドライト装着車)主要スペック
全長…4,440mm
全幅…1,875mm
全高…1,595mm
ホイールベース…2,700mm
車両重量…2,160kg
<原動機>
種類…交流同期電動機
定格出力…160kW
最高出力…300kW(408PS)/4,350~13,900rpm
最大トルク…660Nm(67.3kgm)/0~4,350rpm
<駆動用バッテリー>
種類…リチウムイオンバッテリー
総電圧…396V
総電力量…78kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)…187Wh/km
<駆動方式・一充電走行距離>
駆動方式…電子制御AWDシステム
一充電走行距離(WLTCモード)…485km
<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット式
リヤ…マルチリンク式
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。